日本一の生産量を誇る広島県産のカキに異変が起きています。夏の猛暑に加えて、海の変化にも原因があるとみられています。
広島を代表する冬の味覚・カキ。先月、水揚げが始まりましたが…
島村水産 島村広司さん
「例年より小ぶり。大きくなってくれるか心配。10月までこんな暑い日は記憶にない」
ここ数年、夏の猛暑で身が小ぶりだったり、収穫時期が遅れたりして、広島県全体で生産量が伸び悩んでいます。
地元でトップクラスの出荷量を誇る水産加工会社です。粒の大きさに応じて、カキを仕分ける作業をしていますが、よく見ると、小さいむき身も目立ちます。
クニヒロ 川崎育造 会長
「去年と比べるといいが、(生育が)平年より遅れている。去年は広島だけでなく、全国で最悪。水温がどんどん高く、住みづらい・生育しづらい環境に」
環境の大きな変化を受けて、カキの生産は転換点を迎えていると危機感を募らせます。
クニヒロ 川崎育造 会長
「これから20年、30年、今の形で養殖できるかどうか」
カキ養殖の土台を揺るがすのは、夏の猛暑だけではありません。専門家は「きれいになりすぎた海」にも要因があると指摘します。
広島大学(水産学) 小池一彦 教授
「少ない、こんなものではない。(カキの)エサがあまりない」
かつて、水質が悪かった瀬戸内海。周辺の川の環境も良くなり、今では水質が大幅に改善しました。ただ、プランクトンの栄養となる窒素やリンが失われ、カキが育ちにくくなったといいます。さらに、カキの生育には上流の山も重要な役割を果たしますが…
広島大学(水産学) 小池一彦 教授
「川は沿岸部に栄養を運ぶ重要な役割。今年は全然、雨が降らない。栄養不足に拍車をかけている」
こうしたなか、広島大学は新たな試みを始めています。
広島大学(水産学) 小池一彦 教授
「カキがぶら下がる水深でプランクトンが増えないと、エサにならない。機械で強制的に引き上げる」
海底は表面と比べて水温が低く、良質なプランクトンも多く残されているそうです。ホースで海水を引き上げ、いかだ全体に行きわたらせることで、むき身の重さが30%以上増えるなどの研究成果も出ています。
広島大学(水産学) 小池一彦 教授
「(瀬戸内海は)魚、カキ、海藻を生み出す畑。肥料が全くないと、とれない。ある程度の豊かさは、もともと瀬戸内海が持つポテンシャル」
きれいな海は生き物にとって、豊かな海とは限りません。自然の恵みを受け、できた特産だからこそ、守り続けていくための模索が続きます。
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