ガザへの支援を続ける国連機関の職員が取材に応じ、人々は「生き延びるだけで精一杯で、安全なところはない」と過酷な実情を訴えました。
国連開発計画 野口千歳さん
「緊急ですね。どうぞ話して」
緊張した様子で電話を受けるのは、UNDP=国連開発計画でパレスチナ人支援プログラム副代表を務める、野口千歳さんです。おととし6月まで、ガザ地区の事務所長として、経済復興や生活再建などの支援を行い、現在も東エルサレムから活動に携わっています。日本の資金援助による「紛争後のインフラ・経済調査」および「がれき除去プロジェクト」にも取り組んできました。
ただ、10月7日のハマスとイスラエル軍による戦闘開始以降、野口さんはガザにいるおよそ50人のスタッフの安否確認に追われています。通信状況が悪く、丸一日以上、連絡がつかなかったこともあり、最悪の事態も想像したといいます。
この日、ガザから電話をかけてきたのは、野口さんがガザにいた当時も一緒に働いていた、現地スタッフのイマーンさんでした。イスラエルから退避勧告のチラシが南部にいる人たちに配られ、南部の避難所にいたイマーンさんたちがどう対応すればいいのか、その相談でした。
国連開発計画 野口千歳さん
「朝も昼も夜もずっと空爆が続いているので、外に出ること自体、命がけなんです。2日前にはスタッフが食料の買い出しに出て、100mほど離れたところのビルが崩壊して、2人がケガをしました。本当に食料や水を確保するのが大変、それを買いに行くのも命がけ。生き延びるので精一杯という形です」
スタッフは今のところ、全員無事ですが、親族を失っている人が多くいます。南部での激しい空爆で命を落とす人が多いことなどから退避せずに、北部に残るスタッフや家族も少なくないのです。
国連開発計画 野口千歳さん
「心が痛むのは、南でどんどん空爆が起きていて、北から南に移ったからといって安全になるわけではない。(スタッフの中には)北部の自分が生まれ育った家に残って、何が起きるかわからないけれど、そこにいた方がマシだからと言っている人もいます。どういう運命になるかわからないけれども、と。ガザのどこも安全ではない。ガザはどこにも安全なところはない、という状況です」
紛争による破壊と再建が繰り返されてきたガザ。ただ、今回のような甚大な規模の破壊は例がなく、支援活動の再開はおろか、被害状況の調査すら行える見通しは立っていません。
国連開発計画 野口千歳さん
「国籍とか宗教とか人種とか関係なく、人間としてこれが起きていることを見て、許すことができるのか。とにかく人道的停戦が実現しないと本当に将来はないと思っています」
“戦争を止めないといけない”世界中の人々の、この思いが強まり、停戦が実現することを野口さんは願っています。