佐渡トキ保護センター長を務めた近辻宏帰さんは、1967年の佐渡トキ保護センターの開設にあわせ、当時24歳の時に東京から見知らぬ新潟の佐渡にやってきました。

絶滅が危惧されるトキを守ろうと進めた人口繁殖。
しかしその道のりは容易ではなく、カップリングには成功したものの卵が卵管に詰まって死んでしまうなど、一斉捕獲した5羽のトキは次々と死んでいきました。

失敗するたび近辻さんには関係者から批判が集まりましたが、それでも近辻さんはトキと共に過ごし続け、とうとう1999年に日本初の人工繁殖を成功させました。

2003年にトキ保護センターを定年退職した後も近辻宏帰さんは、トキの魅力を伝えながら、裏方として野性復帰に向けた活動を支え続けます。そして、2008年に実施されたトキの「第1回放鳥」では、秋篠宮ご夫妻の補佐役も務めました。
その時トキは、近辻さんの手でそっと押され大空へと羽ばたいていきました。

40年以上に渡ってトキの保護に尽力してきた近辻宏帰さんは、この「第1回放鳥」の翌年に亡くなります。