その“足の速さ”が並でないことは知っていた。実際、内野ゴロがセーフになるのを目の当たりにしたのも1度や2度ではない。それでも、ドラフト会議当日を迎えても半信半疑だったのは否めない。

しかし、そんな心持ちも一瞬で吹き飛んだ。午後8時2分。ドラフト会議開始から3時間が過ぎ、その瞬間は訪れた。

「ヨミウリ ウツノミヤ・・・」

その瞬間、愛媛県松山市中心部のホールに設けられた会見場には、地響きのようなウオーッといううなり声が沸き上がり、直後には悲鳴に近い嵐のような大歓声は、会場前方でスクリーンを見つめる“やや細身”の背中に浴びせられた。

「宇都宮・・・」の後は、ドラフト会議場のナレーションが完全にかき消されたのであらためて-。

巨人の育成3位で指名されたのは、愛媛マンダリンパイレーツの宇都宮葵星(きさら)選手、19歳。愛媛県立松山工業高校出身、1年目の内野手だ。

今から約8か月前、愛媛MPの新入団会見に学生服姿で出席した宇都宮選手。実はその時点で既に報道陣の注目を集めていた。