イスラム組織ハマスによるイスラエル攻撃に端を発した中東情勢の緊迫化が、そうでなくでも厳しい世界経済の先行きに暗雲をもたらしています。

原油価格は90ドルへと再び高騰

イスラエルやガザ地区は産油地帯ではありませんが、中東情勢の緊迫化は否応なく原油価格の上昇を招きます。一触即発のリスクを連想させるからです。19日のニューヨーク市場のWTI先物価格は、一時1バレル=90ドルの大台に乗せました。

原油価格はウクライナ戦争開始後、1バレル100ドルを超える水準にまで急騰した後、今年前半には70ドル前後にまで下がって落ち着き取り戻していました。しかし、産油国の減産もあって再び上昇に転じ、そうした中で、今回の中東での「戦争」という事態になりました。イスラエルとパレスチナの対立がより深く、より長くなればなるほど、関係国の間にも対立が持ち込まれるリスクが高まり、そのことが原油供給への不安を掻き立てるのです。

イスラエル軍によるガザへの地上侵攻が行われれば、事態は深刻化するでしょうし、例えば、イランがハマス支持を鮮明にした場合、対イラン制裁の強化を通じて、イラン産原油の輸出減少を招く可能性もあります。アメリカがイスラエル支持に傾き過ぎるとサウジアラビアが増産の求めに応じにくくなるといった事態もあり得るでしょう。

この時期に原油価格が高騰すれば、ようやく収まりかけたインフレを再加速させかねず、世界経済回復の足は大きく引っ張られてしまいます。