それって物価高対策なの?と、思わず突っ込みを入れたくなりました。物価高対策が参議院選挙の最大の争点に浮上する中、21日、政府は岸田総理自らが本部長を務める「物価・賃金生活総合対策本部」という大仰な名前の会議の初会合を開きました。選挙戦を前に何か緊急の対策が打ち出されるかと思いきや、出てきたのが『節電ポイント』でした。

『節電ポイント』は電力需給がひっ迫する時期に電力会社が節電を要請した際に、過去の使用量に比べて節電した電力量に応じてポイントがもらえるという制度のことで、そのポイントが買い物などに使えることから、実質的に電気代がその分だけ安くなるというわけです。政府としての制度設計はまだこれからですが、実は、岸田総理の本部に言われるまでもなく、すでに一部の電力事業者は、この夏の逼迫回避に向けて、節電ポイント付与の取り組みを発表しています。各社によって違いはありますが、概ね、▼事前に登録した顧客に、▼逼迫時に節電協力要請を通知し、▼過去の使用量と比べて節電したら、▼1キロワット時(kwh)あたり5円から10円分のポイントを付与するというもので、月260kwh使用という平均的世帯が3%節電すれば、電力使用量が8kwh減るので、月40円から80円分のポイントがもらえることになります。

しかし、月260kwhの世帯の電気料金は大体8500円ぐらい、この1年間に25%以上、額にして1700円前後値上がりしていますので、月数十円のポイントでは、焼け石に水といったところで、手間を考えると「馬鹿にしないで」と言いたくなります。しかも、もともと電力消費量の少ない人やすでに節電している人には節電余地があまりありません。ポイント制への登録や、逼迫情報の受信、ポイントの交換など「ネット弱者」には使いにくいといった短所も指摘されています。

木原官房副長官は、24日、節電プログラムに参加した世帯に2000円相当のポイントを支給すると共に、電力会社の節電ポイントに国がさらに上乗せする方針を明らかにしましたが、物価高対策としての効果が限定的であることに変わりありません。

そもそも『節電ポイント』は、「デマンドレスポンス」と呼ばれる、需給を調整するための仕組みなのです。電力のように需要の振れが大きいものでは、消費者に需給調整に協力してもらうことは有効であると同時に、対価を支払う経済合理性もあるからです。経済産業省はこの冬の電力逼迫に備えて、『節電ポイント』制度の本格稼働を検討していましたが、インフレ加速で急遽、前倒し登板となった格好で、しかも「物価高対策のエース」に祭り上げられてしまいました。早く何か対策を打ち出さなければ、という岸田政権の焦りもうかがえます。

電気はあらゆる人にコストとしてのしかかるので、電力料金の抑制を物価高対策の柱に据えること自体は理にかなっています。批判はあるにせよ、ガソリンなどに対する石油元売りへの補助金が、ほぼリアルタイムで価格抑制に大きな効果を発揮したことは明らかです。だからこそ、電力についても、制度の構築に手間やコストがかかる『節電ポイント』などよりも、より効果の大きな、わかりやすい対策が望まれます。

播摩 卓士(BS-TBS「Bizスクエア」メインキャスター)