
【編集後記】TUF報道部 伊藤大貴記者
今回は富岡町で震災のガイドを務める秋元菜々美さんを取材しました。震災当時、中学1年生だった秋元さんと、中学3年生だった福島市出身の担当記者。どちらも「あの日」を経験している同世代です。
震災から11年という年月が経ったいま、「同じ思いをしてほしくない」と強く願う人がいる一方で、「記憶が薄れてしまうのは仕方ない」という声もあるように感じます。そんないまだからこそ秋元さんに聞いてみたいことがありました。
「人々の記憶から震災がなくなるのは嫌ですか?」
インタビューが終わり、カメラが回っていない時に担当記者が失礼を承知の上で投げかけた質問です。
「う~ん……。(忘れられることで)報われない人がいるのは嫌だなと思うんです。避難指示が解除される前に亡くなった町の人がいるので。震災がなかったことにはならない」
町の復興を見届けることなく、志半ばで亡くなった人の思いを背負ったようなこの言葉。語り継ぐという使命感を形成する大事なピースなのかもしれません。この町にそういう人たちの営みがたしかにあった証を、人々の心の中に残そうとしているように感じました。
40分に及んだインタビューで抽象的な質問が多くなった担当記者に対しても、ひとつひとつ言葉をつむぐように丁寧に答えてくれた秋元さん。その中で繰り返し話していたことがあります。
「私の考えがすべてじゃない。いろんな考えがある。私の経験を伝えたうえで『あなたはどう思いますか?』と投げかけて、一緒に考えるきっかけを作りたいんです」