にわかに減税論議が盛り上がってきました。発端は、「税収増を国民に還元する」という岸田総理の思わせぶりな発言でした。
素直に聞けば、経済対策で「広く国民に行き渡るような減税をする」と受け取れます。当の岸田総理は未だ具体的に踏み込まないまま、議論は期待先行型です。
自民党幹部が所得税減税に言及
自民党の茂木幹事長は、3日、「ダイレクトに減税措置によって国民、企業に還元することもあり得る」と発言しました。
自民党の世耕参院幹事長も同日、「還元のやり方は党内で議論していけばいい、法人税と所得税の減税も当然対象になる」と減税検討を明言しました。
所得税減税は、物価上昇に賃金が追い付かず実質所得が減少している今の局面では、消費を下支えする有効な政策です。
6日発表の毎月勤労統計によれば、8月の実質賃金は前年同月比2.5%減で、実質賃金のマイナスは17か月連続です。
納税額の少ない世帯や非課税得体には給付金を支給することとセットで実施することが通常のやり方です。
所得税減税の良いところは、減税分を何に使うかは国民それぞれが決められることです。
ガソリン代の足しにしても良いし、食料購入の足しにしても良い。その意味では、大規模所得税減税を行う場合には、今のガソリンや電気・ガスなどへの個別の補助金をなくして置き換えるのが自然です。
その一方で、所得税減税となると、一体、どの所得層にどれだけ、いつまで減税するかなど、制度設計に時間がかかる他、国会審議や実施までの準備に時間を要するという短所もあります。
自民党内からも消費税減税論
自民党内の若手議員からなる「責任ある積極財政を推進する議員連盟」は、4日、物価2%が安定的に達するまでの間、消費税率を5%に引き下げる提言をまとめました。ついに自民党内から消費減税論が出始めたのです。
中村共同代表は、食品などに適用される8%の軽減税率を時限的にゼロにすることも選択肢として挙げています。
消費の減少を食い止めるために消費税、とりわけ軽減税率を一時的に下げるという考え方は、合理的に思えます。
今の物価高の大半は食料とエネルギーです。ですから8%という食品の消費税率を例えば5%に下げれば、ダイレクトに家計負担が軽減されます。
所得が低い層ほど支出に占める食料品の割合は高いので、そうした層への効果は大きくなる一方、すべての人に適用されるので、公平感もあります。
所得税減税のように、どの所得層で線引きするかと言った議論は必要ありません。