◆居酒屋店主は「登録しない」を選んだ

一方、当面は「免税事業者」のままでいることを選択した人もいます。福岡市内で居酒屋とうどん店を経営する守山範行さん(50代)です。

角打ち凛々 守山範行さん
「売上を上げて消費税も申告所得税もきちんと納めることが一番良いのですが、なかなか今は、新型コロナ以降厳しい状況です」

守山さんは、新型コロナの流行前は3店舗を経営していましたが、緊急事態宣言の影響で1店舗を閉店。いまだに客足は戻っておらず消費税を負担するのは厳しいと話します。

角打ち凛々 守山範行さん
「毎日わずかな売り上げで、現金仕入れでしている中で、消費税をまた別途支払わないといけなくなれば、年間で何十万円という金額を払わなければいけない、そんな余裕は本当にないです。今の状況では」

免税事業者のままでいた場合、領収書精算に対応できなくなりますが、守山さんの場合は、消費税を負担するよりも影響は少ないと考えています。

◆インボイスの影響受けない事業者もある

多くの相談にのっている公認会計士の力丸宣康さん力丸さんによると、実は、インボイス制度では、影響をダイレクトに受ける事業者と、ほとんど影響がない事業者があるといいます。

公認会計士 力丸宣康さん
「BtoB、つまり企業間で取引をしている事業者にとっては、死活問題になります。登録事業者にならなければ、取引料金値下げの対象になるかもしれないし、取引自体をもしかしたら失うかもしれないので、業種や、今後どうやっていきたいかという話を聞きながら相談に乗っている状況です。
一方で、例えば医科・歯科や、個人客だけを対象にした飲食店などは、訪れる客が経費として領収書を求めるケースが少ないので、インボイス登録しようがしまいが集客に関係はありません。この方たちには、『登録事業者にならずに、免税を続ける選択をしましょう』という話をしています」

◆元々の「課税事業者」にも負担が

インボイス制度については、元々納税していた「課税事業者」も対応を迫られています。適格請求書に記載された登録番号が正しいかどうか国税庁のサイトでチェックするなど、事務作業量は数倍に増えるといいます。

公認会計士 力丸宣康さん
「免税事業者の課税事業者への切り替えが思惑通り進まない中、インボイス制度の導入で、元々消費税計算をして納付していた人の負担がさらに増えるということが、世の中全体として起こりつつあります。私たち会計業界では『記帳代行』と言って、帳簿を付ける時間が今までの2倍、3倍になると言われています。インボイス制度のルールを100点目指してやろうと思ったら、本当に仕事が回らなくなるぐらい負担が大きい、それは私たち会計業界もそうですし、企業の経理の方もそうだと思います」