戦時下にもかかわらず汚職事件が相次ぐウクライナ。その汚職大国に、アメリカが「改革リスト」を突きつけました。それは、アメリカが支援を継続する条件であるだけでなく、ウクライナの汚職体質を変えるものになるとの見方があります。ウクライナで汚職の告発を続けるネットメディアの記者、ユリー・ニコロフ氏に聞きました。

ユリー・ニコロフ記者
「解任ばかりでなく、逮捕も行われると期待しています」

軍の食料調達に関する汚職疑惑をネットメディア「ナシ・グロシ」で告発し、レズニコフ前国防相を事実上の更迭に追い込んだニコロフ記者。この疑惑を巡っては、これまでに国防次官ら2人が逮捕されています。

ニコロフ記者
「汚職に関与したのはこの2人だけではないと確信しています。契約の締結だけではなく、商品の受け取りを担う人たちも大勢、汚職に関与したと思います。酷い品質の商品が届いたのに、条件通りの良質な商品である旨の書類に署名をした連中がいたのです」

汚職の裾野は広いと話すニコロフ記者。背景のひとつに、政府調達の不透明さがあると指摘します。

ニコロフ記者
「国防省が独断で提示した入札条件のせいで大手食料品チェーンがウクライナ軍の食料の調達に参加することが出来ませんでした。その結果、兵士の食料調達を担ったのは実績が怪しい不透明な企業でした」

そんな汚職大国に巨額の支援を行っているアメリカは9月25日、支援を継続する条件として改革すべきリストをウクライナに突きつけました。その中で、優先課題として挙げたのは、汚職取り締まり機関の強化。国防省に対しては、調達に関する透明性の確保を求めています。

ニコロフ記者
「アメリカは、ウクライナで解決すべき問題を明確にするためにこの提案を送ったのだと思います。残念ながら、我が国のエリート層は欧米諸国やIMFに何らかの約束をして、実行すると公言するが、その後は何もしない、という流れに慣れてしまったのです」

西側諸国から何度も指摘されてきた汚職体質は、今も変わっていないと、ニコロフ記者はいいます。こうした中、アメリカから出された「改革リスト」には、電気料金とガス料金の自由化、つまり値上げを要求しています。政府の財政負担を軽くするためですが、ニコロフ記者は、汚職を防止する効果もあると見ています。

ニコロフ記者
「国民のためのガス代や電気代は低めに設定されています。それを支えたのがロシア産の安い燃料でした。政府は国民のために安い光熱費を維持していますが、それと引き換えに国民は汚職について目をつぶるという社会契約があります」

生活の安定と引き換えに、汚職には目をつむるというメンタリティが、ウクライナ国民にあると話すニコロフ記者。それは、ロシア社会にも共通する意識で、電気・ガス料金の自由化は、そうしたロシアからの脱却でもあるとニコロフ記者は強調します。

ニコロフ記者
「ウクライナでは市民のためのガス代は本当に安いのです。自由化とは料金を高くすることで、個人向けの料金の値上げは、これまでの大統領たちが踏み切れなかった非常に苦しい対策です。これはロシアから離れるための必要なプロセスであるということをみんなが分かっています。私達はロシア人とは異なった人間になるべきです」