深刻な当事者の状況を伝えるためデータを提示
小川キャスター:
與さんが公表された時のスピーチの中でも印象的だったのが、数字を出して訴えられていましたよね。あえて、このように統計を出してお話になられたのはどうしてですか。
與さん:
実際、そういうことなんですよ。自分も自殺願望まではいかなかったですけれど、一時期、「あれ、なんで生きてる?」って、「何のためだろう」って思った時期があって。それを思った瞬間に、このままじゃやばい、このままじゃ自分の人生… こんな社会に負けたくない、こんな社会に自分が負けるのは絶対違うって、もうどっかで心を決めていたので。
「カミングアウトはしなくてもいいから一人じゃないよ」
與さん:
ちゃんとわかってない方たちにやっぱり数字を言うことによって「あ、これだけシリアスなんだ」って。LGBTQ+のみんなって、多分みんなが通るところだと思うんですけれど、自分が世界で一人だと思っちゃうんですよ。特に小さい時。特に僕の世代より上の人たちは、それを強く思ってる人が多分多いと思うんですよ。
さっきも言いましたけれど、昔はインターネットもなかったし、そういうLGBTQ+の映画やドラマもなかったですし、テレビで発信されることもなかったですし。「もう自分は変わってるんだ。だから誰にも言えない」ってなってどんどんどんどん一人ぼっち、もうどうしよう、どうしようってやっぱりメンタルがどんどんちょっとおかしくなってきちゃってっていう、そこもすごいわかるんです。だから、ちょっとでもメンタルが弱い人はそっちに流れちゃうので、そこも含めて僕は、今回カミングアウトを決意した理由の一つとして、そういう人たちが本当に減ってほしい。カミングアウトはしなくてもいいから、一人じゃないよっていうことを本当に伝えたかったんですよ。
僕もそう思ってたし。本当に自分が小さい時は「もう誰も理解できないし、自分は一人なんだ、変わってるんだ、もう誰もわかってくれない」って、もう常に思ってて。もちろん自己肯定感も下がりますし、なんか自分が何をやりたいかもわからなくなってくる。だから、そこをもう一人でも、もう経験して欲しくない。
「一人で抱え込むのは辛い」見つけてほしい“信頼できる一人”
小川キャスター:
とにかく一人じゃないんだと、強い口調でおっしゃってましたけれども、当事者の方に今、語りかけるとしたら、どんな言葉ですか?一人じゃない… どうしたらいいんでしょうか。
與さん:
とにかく、一人じゃないっていうことは、絶対に思ってほしい。すぐカミングアウトをするっていうことも(絶対の)正解じゃないっていうことも、わかってほしい。けれど、一人で抱え込むのは辛いと思います。でも、今の社会がそういう言いづらい環境っていうのは、もうしょうがないこと。そんな1日で変わらないです。だから、LGBTQの当事者の方たちに僕が何か厳しく言うっていうのもおかしな話なんですけれど。自分が変わりたかったら、やっぱり信頼できる人を自ら探しに行くとか、自分の今いる世界から一歩ドアを開けて出ないと絶対に今のまま変わらないと思います。もちろんそれをしなくていい社会に世界がなってくれたら、もちろんそれがゴールだし、それは僕も思ってるんですけれど。それ(社会)はそんな1日でポンと変わらないから。自分が今辛いってなるんだったら、どうにか、まずは一人でもいいから、信頼できる人を見つけてほしいなって。
でも、その一人を見つけるのがすごく難しいのもわかるんですよ。だから、アウティングされたらどうしようとか、やっぱり、そこも僕もすごく考えましたし。でもリスクを取らないと新しい世界は広がらないから。「もう自分はゲイだから、もう何もできない」って、そこの社会に負けて欲しくないっていうのは、本当に心の底から思います。
悩める家族への助言 「わからなくても、わかる努力をしてほしい」
小川キャスター:
その信頼できる一人に最もなってほしいのが、一番身近な存在にある方たちですよね。家族だったり、仕事の同僚だったり、学校の仲間だったり、友人だったり、親戚なのかもしれないですし、そうした周りの方たちになりうる人たちへのアドバイスというのは何かありますか。こういう佇まいで見守っててほしいなのか。聞き出して欲しいのか。
與さん:
もちろん周りにLGBTQ+の方がいなかったら、初めて聞くと誰でもびっくりすると思うんです。でも、理解をする努力を、努力というか、LGBTQ+の人たちも言うのにすごく精神も使いますし、体力も使いますし、本当に簡単なことじゃないんですよね。
なので、それを家族の方とか、自分が信じられる人が、その時わからなくても、わかる努力をしてほしいなとは正直思います。それは自分勝手かもしれないんですけれど、自分たちが決めてなったことではないので、そこを理解しながら歩み寄ってもらえると嬉しいなって。特にそれが大事な人だったら、時間はかかるかもしれないですけれど、なんか最初っからシャットダウンはしないであげてほしいなって思います。
新曲に込めたメッセージ「明るい光は絶対にある」
小川キャスター:
與さんは新しい楽曲を出されましたけれども、かなり今のご自身の思いを率直に歌詞にしたためられているんじゃないかなというふうに思ったんですが、どんな思いでこの新曲を出されましたか。
與さん:
僕はもう2年ぐらいアーティスト活動を休止してて、個人としても。2年前にAAAが活動休止になって、その後、自分もソロアリーナツアーをやって、ソロアーティストとしても活動休止をしてて。その時に本当にいろんなことを考えて、今までほぼ19年間ぐらいノンストップでずっと芸能界で戦い続けてきて、自分のセクシャリティの問題もあったので、1回、自分で考えないといいものができないと思ったんですよね。
だから、その時にいろんなことを考えて、いろんなことを学んで、いろんなことを経験して、いろんな人と話して、「あ、こういう歌詞を書きたい」ってなんか思って。自分の葛藤したことも書くけれど、でも絶対に新しい光はあるよって、明るいその光は絶対にあるはずだから諦めずに頑張ってほしいっていう。
それはLGBTQ+の方だけじゃなくて、今、自分の人生に悩んでいる人とか、トラウマがあってなかなか自分が思っているような人生になってないとかっていう人も含めて、ずっと暗いまんまじゃないよっていうのをわかって欲しかったっていうか、そういうテーマをもとに全部英語になってしまったんですけれど、それはやっぱり世界の人にも聞いて欲しかった。こういう人もいるんだよ、みんな一人じゃないんだよっていうのを、やっぱりわかって欲しくてこの歌詞にしたんですけど。日本語もYouTubeに載せているので、日本語で見てほしいです。
とにかく、絶対にずっと暗いままじゃない、いつか絶対に自分が頑張れば、諦めずに生きていれば絶対に助けてくれる人がいる、わかってくれる人がいるっていうのを、当事者だけじゃなくて、自分の人生に悩んでいる人たちがあの曲を聞いて、「なんかちょっと明るくなったな、気持ちが」って思ってくれたら嬉しいなと思ってます。
将来の夢「僕しかできないことをどんどんやっていきたい」
小川キャスター:
そのメッセージの中身、そして、表現するということへの強い思いも感じるんですが、これからどんなふうにご自身の活動を続けていかれたいと感じていらっしゃいますか。
與さん:
僕はもう本当に音楽だけじゃなくて、いろんなことをしていきたいなって。「與真司郎って何者?」って言われたら、何だろうって言われるような存在になっていきたいなって。僕しかできないことをどんどんどんどんやっていきたいなって。
オープンに、「自分はこれしかできない」じゃなくて、僕は何でもやって。もうとにかく自分は人と話してるのが大好きですし、人の笑顔を見るのも大好きですし、人と語るのが本当に大好きで。だから、今も本当に楽しくて、楽しいというか、すごく有意義な時間だなと思いながらやらせてもらってるんですけれど。何かそういう、これからもっともっといろんな人と出会って、いろんなカルチャーを知って、いろんなことを発信できたらいいなって思ってます。

















