「宇宙港」のハブを目指して

北海道十勝地方にある大樹町。人口5400人あまりのこの町が今、宇宙への玄関口になろうとしている。
小田切義憲氏。この地で宇宙港=スペースポートを運営するSPACE COTAN(スペースコタン)の社長だ。
宇宙港とは、ロケットなどの打ち上げ場所で、いわば宇宙版の空港だ。

小田切社長
「ここは宇宙港の一部、合計7回ここで打ち上げをしている」
ここ「北海道スペースポート」は、日本で初めての民間に開かれた商業宇宙港として2021年4月に本格稼働した。既にこの地から、宇宙空間に到達した観測ロケットもある。
小田切氏は、宇宙港は人工衛星の打ち上げや宇宙旅行の拠点になるため、宇宙産業の発展にとって極めて重要なインフラだと話す。
そのうえで、「北海道スペースポート」には、世界トップクラスの打ち上げ環境があるという。

小田切社長
「第一の優位性は、東側と南側が大きく海に開いているので、打ち上げるときの障害があまりないというところが、大きなメリットになっています」
まず日本は、大陸にある国と違い、海に面している点で地理的に有利なのだ。さらに大樹町は、航空路や海路も込み合っておらず、1年を通して晴天率が高い。広大な敷地もあり、今後、最大で10か所の発射地点を整備できるという。
小田切社長
「アメリカでは大きなケープ・カナベラルの宇宙基地がありますが、ああいったところにも伍していけるような敷地を持っているので、それぐらいの競争力があると思っています」

「北海道スペースポート」が目指す将来図。ロケットの発射場のほか、水平飛行の機体も発着できるようにする。現在は、滑走路の延伸工事も進めている。
小田切社長
「大樹町は日本あるいはアジアの玄関口、ハブスペースポートとして利用してもらって、例えばここからニューヨークまで1時間とかで行けるようになりますので、ビジネスパーソンの皆さんは日帰りですね」
今、ウクライナ侵攻でロシアからの打ち上げができない。このため、海外の衛星やロケット事業者を日本に誘致するチャンスがあるのだ。
今年6月、国の宇宙基本計画でも「アジアのハブを目指す」ことが明記された。今、日本では北海道に加え、和歌山県や沖縄県など4か所で宇宙港プロジェクトが進む。

しかし、世界には少なくとも70を超える宇宙港のプロジェクトがあり、世界中で激しい誘致合戦が行われている。そんな中…
JAXAの会見
「期待に応えられず、深くお詫び申し上げます」
今年、ロケットの打ち上げ失敗が続く日本。打ち上げ回数は、すでに世界と大きな差がある。

2022年の打ち上げ成功回数
(米国84回 中国59回 ロシア22回 日本0回)
さらに種子島宇宙センターは国のロケット専用で、基本的に打ち上げ場として民間には開放されていない。
日本政府が商業宇宙港にほとんど予算をつけていないのに対し、イギリスは、2019年時点で、すでに80億円ほどの予算を組み、民間が使える商業宇宙港などの整備を進めている。