9月23日から10月8日までの日程で中国・杭州で開かれているアジア大会は囲碁やeスポーツなどユニークなものも含め40競技で熱戦が繰り広げられている。東アジア情勢に詳しい、飯田和郎・元RKB解説委員長は9月28日に出演したRKBラジオ『田畑竜介 Grooooow Up』で「競技場の外」のアジア大会、すなわち隣国同士や主催国・中国の思惑についてコメントした。
◆問題を抱えた隣国同士の場
アジア大会の舞台、杭州は、浙江省の省都。中心部には「西湖」という美しい湖がある。福岡市役所のホームページによると、約100年前、福岡市が大濠公園を整備する時、この西湖をモデルにしたそうだ。西湖も大濠公園も、市民の憩いの場になっている。
杭州アジア大会には、45の国や地域から約1万2000人が参加し、40競技が実施されている。囲碁やeスポーツなどオリンピックにない、アジア大会だけの競技種目もある。
ただ、今回は「競技場の外」のアジア大会を見ていきたい。というのも、世界中から参加するオリンピックとは違い、「お隣さん同士」、またそのために「問題を抱えた同士」の場にもなるからだ。そして、開催国には当然、思惑もあるだろう。
◆習近平政権が「アジアナンバー1」をアピールする場
開会式には、さまざまな趣向が凝らされており、オリンピックの開会式にも引けを取らないくらい派手だった。習近平主席も出席し、開会を宣言した。
中国はすでに夏のオリンピック、冬のオリンピックどちらとも開催しているから、アジア大会はランクとしては下。しかし、圧倒的なメダル獲得数も含めて、途上国が多いアジアにおいて「ナンバー1の中国」、「強い中国」、「このような大会を開くことができる中国」を国内外に示しているのだろう。
開会式には、アジアの各国要人も出席しており、首脳外交の場にもなった。習近平主席は、大会に合わせて、中国を訪れた12の国の要人と会談した。風光明媚な西湖の畔に、政府の迎賓館がある。習主席はそこにずっと構えて、次々と会っていた。中でも、注目されたのが、中東シリアのアサド大統領との会談だ。
シリアでは2011年から内戦が続く。内政に手いっぱいのアサド大統領が、中東の近隣国以外を訪れるのは異例だ。アサド大統領が訪中したのは、シリア内戦が勃発して以来初めてという。
内戦は終結していないが、主にロシアやイランからの支援を受けるシリア政府軍が、優位に立っている。習氏との会談で、一時は孤立していた政権の正統性をアピールしたといえる。一方の中国は経済だけではなく、政治分野でも中東での影響力を増す。中国とシリアは首脳会談で、戦略パートナーシップの樹立を宣言した。どちらにも、利のあるアジア大会外交となったのではないだろうか。














