環境の変化によって失われた駿河湾の海藻を復活させようと、漁業者などが保全活動に取り組んでいます。回復しつつある「海の森」が、二酸化炭素の「吸収源」として専門機関から評価を受けました。
静岡県牧之原市の沖合。ゆらゆらと揺れるのは、「カジメ」という海藻です。ここは、海藻が集まる「藻場」と呼ばれる場所。こうした藻場などの「海洋生態系」がいま、脱炭素の切り札として注目されています。
<南駿河湾漁協 薮田国之組合長>
「ここから沖合約400メートルのところに海藻が生い茂る藻場があります。2022年、牧之原から御前崎にかけての藻場が、CO2の吸収源になると静岡県内で初めて専門機関に認証された」
海藻などの海洋植物は、陸上の植物と同じように光合成で二酸化炭素を吸収し、藻場などの海洋生態系が貯め込んだ炭素は「ブルーカーボン」と呼ばれています。
<南駿河湾漁協 薮田国之組合長>
「『ブルーカーボン』という言葉は耳にしていたが、自分たちのところで影響があるとは考えたことがなかった」
陸の植物は、枯れると炭素が大気に放出され、再び二酸化炭素に戻ってしまいます。一方で、海洋植物は枯れたあとも一部が海底に堆積するため、数百年単位で炭素を貯め込むことができるといわれています。
吉田町から御前崎市の沿岸には、かつて国内最大の藻場がありましたが、環境の変化により消滅しました。しかし、地元の漁業者などが保全活動に取り組み、藻場は徐々に回復。2022年、この藻場の一部が国と連携した「ブルーカーボン」の研究組合から二酸化炭素の吸収源として認められ、静岡県内で初めて「Jブルークレジット」が発行されました。
「Jブルークレジット」は、藻場などによる二酸化炭素の吸収量を企業などに販売できるようクレジット化したものです。
クレジットを売る側は、利益をさらなる保全活動などの資金にすることができ、クレジットを購入する企業などは脱炭素社会の実現に貢献することができます。
<南駿河湾漁協 薮田国之組合長>
「今回、クレジットを販売することができ、約300万円の収入を得ることができた。さらなる藻場の回復のためにこの貴重な資金を使っていきたい」
静岡県も海洋植物の研究に力を入れています。海の豊かさを守るだけでなく、「ブルーカーボン」を増やしていくことも大きな目的のひとつになりました。
<静岡県水産・海洋技術研究所深層水科 清水一輝さん>
「日本は周囲を海に囲まれた島国なので、海岸線には岩場など海洋植物が生える場所が多くある。内陸の国に比べて、ポテンシャルを十分に秘めている。県全体で脱炭素社会に向けて動いている。水産分野は炭素吸収源として海藻を増やして保全していくことが極めて重要だと考えている」
地球温暖化にブレーキをかける海の植物。二酸化炭素の新たな吸収源、「ブルーカーボン」が脱炭素社会実現のカギとなりそうです。
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