家庭ゴミから回収したアルミくずから水素をつくる富山県のベンチャー企業が今注目されている。このアルミ水素は水素として運搬や貯蔵する必要がなく、しかも低コストだということで注目されている。その製造現場を取材した。
低コストで貯蔵・運搬不要かつCO2フリーの「グリーン水素」

富山県高岡市市の中心部から車で40分ほどの山間の温浴施設。客室数わずか七つの小さな宿に全国の企業や自治体からの視察が絶えない。彼らのお目当ては水素。ここで作った水素で、客室の露天風呂にお湯を供給している。必要な量の水素を作り、その場で使うので、貯蔵や運搬のコストが不要、しかも製造過程でCO2を排出しない、いわゆるグリーン水素だ。

原料は水とアルミ、これにアルカリ反応液を加えると化学反応が起こり、水素が発生する。地産地消で低コスト、CO2フリーを同時に叶えているところが関心の的だ。この製造プラントを開発したのが富山県のベンチャー企業「アルハイテック」だ。2023年7月、アルハイテックは経済ミッションを目的とする岸田総理の中東3か国訪問に随行する30社に選ばれた。UAE政府は石油産業に代わるイノベーションを求めており、ムハンマド大統領は岸田総理によるアルミ水素の説明に熱心に耳を傾けていたという。
水木社長がアルミから水素を作ろうとしたきっかけが、食品などアルミ付きの包装からパルプ部分を除いた残りかすで、プラアルミと呼ばれるものだ。

アルハイテック 水木伸明社長:
私もこれを見て、絶対これは資源。もったいないなと思って取り組みを始めました。石炭が100年、石油が100年ありました。次はアルミだと思っています。

厄介者を資源に変えたアルミ製造機はプラアルミを投入し、アルミの融点より低いプラスチックだけが燃焼する温度で加熱し、アルミを回収する。薄さは7ミクロン。立派なアルミ水素の原料だ。

水とアルカリ反応液が入ったタンクに廃アルミを投入すると、10数秒後には水素が発生します。1時間当たり8キロのアルミで毎分100L、30度の源泉を45度に温める能力があり、アルミと水を追加すれば連続運転も可能だ。これを実現したのがスーパー反応液だ。ところが一般的なアルカリ溶液では反応が進むと能力が落ちるので、商業ベースにはならない。水木社長たちは海外の研究成果をもとに十数年かけて、世界で初めて安全で連続使用できるスーパー反応液の開発に成功した。スーパー反応液を使うと、副産物として高い純度の水酸化アルミニウムができる。建材の製造には欠かせない工業原料で、日本は全量を輸入に頼っている。
アルハイテック 水木伸明社長:
水酸化アルミは工業製品として使えるし、もう1回アルミに戻すこともできるので、利益を出していけば水素は無料に近い値段で使えるのではないかなと。
水木社長はアルハイテックがアルミ水素や水酸化アルミの直接の販売元になるつもりはないと言う。多くの企業がプラントを設置することで脱石油を促し、プラントの運営はアルハイテックが直接関わって、エネルギー変換費としてコストを回収する。アルミ水素の普及に欠かせないのが廃アルミの安定確保だが、今後のアルミ需要の変化が追い風になりそうだ。

EV化の流れで高純度アルミの需要が急増する一方、ガソリンエンジンなどに使う再生アルミの需要は伸び悩む結果、リサイクルされない余剰アルミは今後増える見込みだ。
アルハイテックの水木伸明社長に聞く。

――アルミ付きのゴミはそんなにあるのか。

アルハイテック 水木伸明社長:
薬のシートとかアルミ付きの飲料パック、ストローを刺すところが銀色であれば。あとチョコレート、チーズ、ヨーグルトの蓋とか全部アルミです。製品の中身を長持ちさせる薬品、化粧品、食品はほぼパッケージにアルミがついています。
――アルミができて、水と反応させて水素を作る。それから、水酸化アルミという副産物を作るということだ。水素さえできれば、ボイラーで燃やしてもいいし燃料電池で電気に変えてもいい。必要な場所でやれば、水素を運んだり貯蔵したりしなくてもいい?
アルハイテック 水木伸明社長:
そこが面白いところです。水素を必要なところで必要な量だけ出して使えるというところです。