検査で「陽性」の場合 9割が「中絶」を選択

早川医師は、検査で異常を示す「陽性」が確定した場合、妊娠継続を諦める判断をする人がほとんどなのが現状だと話します。「陽性」は検査数の1、2パーセントですが、そのうち9割が「中絶」という選択をしています。
「産む」か「産まないか」の判断が、命の選別ではないか?という批判に苦しむ人たちは少なくないのです。

難しい選択を迫られる妊婦たちを支援するNPO法人はピアサポート「ゆりかご」を運営しています。ここではオンライン上で同様の悩みを経験した夫婦に相談することができます。代表理事の林伸彦さんは、「同じように悩んでいる人と話をしたい」という妊婦はたくさんいるので、人生で大きな葛藤や悩みをもっている瞬間に話をきくのが大事だと話します。

(山本さん)
「どちらを選ぶにしても自分で納得した状態でいろんなことをわかった状態で選んでねって。私もこのサポートで助けられた」
岡崎市の山本さん夫婦もこのサポートに助けられたといいます。それがきかっけで、ダウン症の子どもを持つ親を孤立させたくない思いから5月から集いの会を始めました。
会の参加者のカバンをよくみると、同じキーホルダーがついていました。これもダウン症の子とその家族を繋ぐきっかけになっています。
ダウン症の子とその家族をつなげるキーホルダー

キーホルダーを考案したのは名古屋市内に住む山口郁江さん(37歳)。3歳の娘・紗楽ちゃんは、生まれた後にダウン症と診断されました。紗楽ちゃんには合併症もあり不安なことばかりでしたが、すぐには相談相手が見つかりませんでした。
(山口さん)
「(ダウン症の子がいる家族を)すごく探したけど、なかなかいなくて。『誰か本当に見つけて』『私を見つけてください』って思って」
ある時、山口さんは病院の待合室で不安そうに赤ちゃんを抱いている夫婦に気づきました。もしかしたらダウン症のあかちゃんではないかと思い、話しかけようとしたものの、そのまま帰ってしまい後悔をしました。
それがきっかけで、何か「マーク」があればいいと思いつき、キーホルダー「ファインドミーマーク(みつけてくれてありがとう)」を作りました。

ダウン症の子どもを持つ家族が繋がる目印になってほしいと、一昨年インスタグラムにアップすると、驚くほどの反響があり全国から注文が相次ぎました。その数は2500個を超えていて、山口さんが1つ1つ梱包し無料で発送しています。
(ファインドミーマークを持つ母親たち)
「見つけて話しかけたことがあっ。こういうつながりができてうれしい」
「自分だけじゃない心強さがある」
診断を受けて「産む、産まない」はそれぞれの家族の判断。「誰も悪くない」とした上で
ダウン症の子の親として、山口さんはこれだけは伝えたいといいます。
(山口さん)
「合併症に関しては入院したり手術は大変だったりするんですけど、幸せですし、楽しくやっているので、それは世の中の人に伝えたい」
新型出生前診断は、日本産婦人科学会の指針をもとに、遺伝カウンセリング体制が整った約100の認定施設でのみ実施が認められてきました。しかし出産年齢の上昇に伴い診断を希望する妊婦が増加。カウンセリングの整っていない美容外科など無認証の医療機関での診断が急増していて、妊婦が診断結果を受け止められず、十分なカウンセリングも受けられないなど混乱する問題も起きていました。そこで日本医学会の運営委員会はことし2月、「検査を受けられる医療機関を増やすことや35歳未満の妊婦にも認める」という新たな指針を公表しました。
運営委員会は大学病院など169施設を、実施体制の要となる「基幹施設」に認証。いわゆる認定施設は約1.6倍に増えることになりました。運用は7月1日から開始されます。
CBCテレビ「チャント!」6月15日の放送より。