9月13日に行われた自民党の役員人事と内閣改造では、小渕優子氏の選対委員長起用や、史上最多タイの5人の女性閣僚誕生などが話題となった。その中で、多くの人を驚かせながら、あまり話題に上っていない人事がある。それが林芳正外務大臣の退任だった。なぜ林氏は交代となったのか。
「派閥を頑張ってもらいたい」 岸田総理からの要請
内閣改造を翌日に控えた9月12日の昼、宏池会(岸田派)のナンバー2、林外務大臣は総理官邸を訪れた。
週末にウクライナを訪問していたことについて、岸田総理に報告するのだという。
およそ30分後、総理執務室から出てきた林氏は硬い面持ちだった。
林 芳正外務大臣(当時)
「(記者:人事については)ウクライナの報告だけです」
記者団の質問にこのように答え、官邸をあとにした林氏だったが、実際には、この総理との会談で、林氏の大臣交代、そして後任に上川陽子氏をあてる人事が正式に決まったという。
政府関係者によると、この場で、岸田総理は林氏に次のように要請した。
「派閥を頑張ってもらいたい」
“最大のサプライズ”外務大臣交代

9月13日に行われた自民党役員人事と内閣改造。
最大の焦点だった茂木幹事長の処遇をめぐって思い悩む中、岸田総理はいくつかの人事プランを用意していたとされる。小渕幹事長説や萩生田官房長官説など、さまざまな案が永田町をかけめぐったが、外務大臣人事についてはほとんど話題にならなかった。それは、林氏が外務大臣として1年10か月の間、堅実に仕事をしていたこともあり、続投があたかも既定路線であるかのように見られていたためだ。

後任が同じ派閥で女性の上川氏だったことを聞いたアメリカの政府関係者は、「岸田がこの大臣交代を断行した勇気に驚いた」と興奮気味に語り、ある自民党幹部は「完全に岸田さんがライバルを潰した」との見方を示した。
霞が関や永田町からは「最大のサプライズ人事だ」との声が漏れた。