再開発が行われている東京の明治神宮外苑について、ユネスコの諮問機関であるイコモスが「類例のない文化的資産」だとして事業の撤回を求めました。イコモスは何を問題視しているのでしょうか?

神宮外苑再開発「撤回要求」ユネスコ諮問機関が警告

山内あゆキャスター:
イコモスは国際組織です。世界遺産のニュースなどで出てきますよね。ユネスコ世界遺産委員会の諮問機関イコモスは世界遺産の審査・保護を行う機関です。

この国際機関が東京の明治神宮外苑の再開発事業に対して、「ヘリテージアラート」つまり文化的な遺産を守るべきだという警告を出したわけなんです。事業者、それから認可した東京都に対して、この再開発計画の撤回などを要求しました。

では一体どんな再開発事業なのか、そして何が目的なのか、この辺りについて見ていきましょう。

明治神宮外苑、上空からの様子です。国立競技場、そして、ヤクルトの本拠地である神宮球場、東京のラグビーの聖地とも言われる秩父宮ラグビー場。人気のイチョウ並木。絵画館、これが一体どうなるのか、モデル図を見てみます。

まず大きなビルを建て替えます。新たに2つのビルができます。神宮球場は大きく変わります、ホテルが併設されるようになるんですね。球場の位置変わっています。元々球場があった辺りに新しいラグビー場ができます。コンサートなども行えるような屋根付きのラグビー場になるそうです。

絵画館はこのまま。手前の緑地は少し緑を増やします。そして、緑の部分がイチョウ並木、つまりイチョウ並木は残るという計画なんですね。

今回のこの再開発の最大の目的は、老朽化したスタジアムの建て替え、スポーツの新たな拠点作りということなんです。実際の工事は今年の3月から始まっています。まずは取り壊しのところからで、完成予定は2036年。

そして、この再開発の中で伐採計画が出ているわけなんです。特にここが問題視されています。

活力が低下している樹木などは伐採し、まだ元気なものについては植え替える。さらには新しい木を植樹する予定。イチョウ並木は伐採せずに保全するということになっているんです。

それなのに、なぜ反対運動があるんでしょうか、まずは歴史から見ていきましょう。明治神宮外苑ができたのは1926年、約100年前のことです。スポーツ・文化施設・緑地・公園などからなるこの一帯は、多くの国民が木を提供したり、献金することによってできたという公園なんです。

この経過というのも、イコモスにとってはとても重要なことのようです。今回このイコモスの計画の中で「市民の献金と労働奉仕により作り出された世界の公園史でも、類例のない文化的資産」であるというふうに認定しているんです。

伐採や移植によって、環境が“完膚なきまでに破壊される”と指摘し、中止を求めているということなんです。