44人が犠牲になった胆振東部地震から、6日で5年。
必ずやってくるといわれる巨大地震から命を守るための道すじを、津波対策の先進地から見つめます。
千島海溝と日本海溝で想定される巨大地震。
千島海溝では、今後30年以内に、マグニチュード8.8以上、東日本大震災クラスの巨大地震が、7%から40%の確率で発生し、最悪の場合、死者は10万人にのぼるとみられます。
大きな被害をもたらすのは「津波」です。
一方、対策をすれば、死者は8割減らすことができます。
その手立ての一つが…。
石栗教行記者
「この町で住民の命を守るために建てられたのが、巨大な津波避難タワーです」
人口1万人あまりの小さな港町、高知県黒潮町(くろしおちょう)です。
カツオのマチで有名な一方、津波対策の先進地として知られています。
きっかけは、南海トラフ巨大地震の被害想定。
建物の11階、最大34.4メートルの高さの津波という、日本で最も厳しい被害想定が示されたことでした。
黒潮町情報防災課・村越淳課長
「34メートルの想定が出された時に町が一番最初に取り組んだのが、地域担当の職員が各地区に入って行って、地区の図面を広げて、どこに避難路がいるのか避難場所はどこにいるのかを話し合いに行きました」
およそ200人の町の職員、すべてが、防災業務を兼務します。
そして住民の要望をもとに作られたのが。
石栗教行記者
「この町で住民の命を守るために建てられたのが、巨大な津波避難タワーです」
町内には、2013年からの5年間に、津波避難タワー6基を建設。
その一つが、佐賀地区にある日本最大級・高さ25メートルの津波避難タワーです。
18メートルの浸水が想定されているこの地区は、周囲に高い建物がない。
坂道を上り、山側の避難場所に逃げる必要があるのです。
津波の到達時間は、地震発生から16分。
黄色の丸が避難場所ですが、そこまでたどり着けない赤色の区域の住民のために、タワーが作られました。
収容人数は230人。
人口のおよそ半分が65歳以上であること。
そして、車いすの利用も考え、幅の広い、緩やかなスロープもつけました。
黒潮町民
「山まで逃げると言ったら、そこまで(津波が)来たらとても間に合わない、ほっとする感じがある。これができてから」
黒潮町民
「あそこに逃げるところがあるというのは安心感がある。あそこまでだったら杖をついてでも行けるから」
およそ6億円の建設費のうち、7割は国、残る3割を高知県の交付金でまかない、町の負担はわずかで済みました。
2013年には、高知県全体で9基だけだった津波タワー。
この11年間で14倍(今年度末)、126基まで増える見通しです。
河内香さん。地元有志で結成した防災グループの代表です。
防災かかりがま士の会 河内香代表
「向こうの色の違う3本。ネズミ色の柱。タワーを守るために、家とか船とかが流れてきたものが当たるのを防ぐ」
県外からの見学者に、津波避難タワーの構造や、防災活動などを紹介。
その活動で得た収益をタワーの維持管理や備蓄品の購入に充て、まち全体で防災に取り組みます。
防災かかりがま士の会 河内香代表
「(住民に)避難訓練なんかに参加してもらって、1回ここに上がってくると安心感もあるし、ここまでだったら逃げられるなとか自信も持ったし、いい方向に進んでいる」
一方、北海道内をみると「津波避難タワー」があるのは、6つの自治体のみ。
北斗市の場合は、高い場所を通る「高規格道路」をタワー代わりに活用します。
別海町の野付半島です。
押し寄せる津波は最大3.3メートル、ほぼ全域が飲み込まれる想定です。
町は、高さ6.6メートルの避難タワーを整備しました。
別海町 防災基地対策課 押木航主任
「建設費用は設計にかかる費用も含めて1億4千万円程度、緊急防災・減災事業債という国の起債がありまして、最終的には町の持ち出しは30パーセント程度、どの自治体も限られた予算の中で建設費はネックになってくるのではないか」
国は去年、巨大地震に備えるため、釧路市をはじめ、道内39の市と町を「特別強化地域」に指定し、費用の補助率を50パーセントから66パーセントに引き上げました。
また、道も費用の一部の補助を決めました。
釧路町 防災安全課 藤井正樹課長
「ここの公園はいま遊具があるところに置くようなイメージ」
釧路町では、釧路川に近い市街地のうち、3メートルから5メートルの浸水想定地区の公園に4基、1600人が避難できるタワーを建てる計画です。
再来年2015年1月の共用開始を目指します。
一方で、北海道ならではの課題も。
釧路町 防災安全課 藤井正樹課長
「やはり冬季対策ではないでしょうか、冬の避難タワーまでの避難方法、避難タワーに限らず、避難場所すべてを優先的に除雪できるような体制を検討している段階です」
雪や寒さなど厳しい条件が横たわる冬の避難。
命を守るための道すじをどう整備するか、課題は突きつけられたままです。
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