東京電力福島第一原発から出た処理水の海洋放出に中国が猛反発。日本産のすべての水産物の輸入を停止している。日中関係が困難な状況に陥ることは過去に何度もあった。ただ、そんな中でも、かすかな光明、「落としどころ」がうっすら見えていたが、今回はどうなるのか。東アジア情勢に詳しい飯田和郎・元RKB解説委員長が、8月31日に出演したRKBラジオ『田畑竜介 Grooooow Up』で解説した。
◆影の立役者・公明党トップの訪中も拒否
水産物の全面禁輸。鮮度が重要な生鮮品の輸入は実質的に止まった。それに冷凍品や乾物も含めて、日本からの全ての水産物の輸入を禁止された。公明党の山口那津男代表が中国訪問を予定していたが、これも直前になって延期された。
山口代表は、岸田総理の親書を携えて、習近平主席との会談を希望していた。訪中のキャンセルは、中国からあった。「当面の日中関係の状況に鑑み、適切なタイミングではない」「今はその環境にない」というのが理由だ。「岸田総理の親書は受け取れない」ということを意味する。
1972年の日中国交正常化に至る前は、公明党、それに支持母体・創価学会が中国側と関係を築いてきたという経緯がある。半世紀が過ぎても、影の立役者だった公明党とは、中国側とは長年培ってきた信頼がある。中国の要人がよく使う「水を飲む時は、井戸を掘った人のことは忘れない」という存在だ。自民党内にある、時に強硬な対中姿勢を、公明党は補う役割をしてきた。
その公明党のトップであっても、「今は来てもらっては困る」というのは、それだけ、難しい局面にある、と言えそうだ。
◆処理水の海洋放出は向こう30年間続く
水産物の全面輸入停止は、福島から遠く離れた、例えば、沖縄産だろうが、北海道産だろうが対象になっている。日本から中国への農林水産物の輸出は増え続け、輸出相手の国別で中国が最も多い。中国向けの水産物の輸出は全体の3割を占める。ホタテやアワビは高級中華料理の食材として、日本産の品質は、中国人から高く評価されてきた。
ほかにも、青森県・大間のマグロの刺し身、大分県の関サバ・関アジなど、我々日本人も滅多に口に入らない高級品まで高値で取り引きされてきた。それに、日本で盛んな陸上でのサーモン養殖には、中国市場をターゲットにしたものもあるという。
それにしても、中国の一連の対応は、冷静さを欠き、頑なすぎるようにも思える。報道についてもそうだ。24日の午後1時、福島第一原発から処理水の海洋放出が始まると、間髪入れずに「人民日報」のアプリに、ニュース速報が飛び込んできた。そのほか、このアプリには、海洋放出に関するニュースがあふれ返っている。たとえば、処理水放出について「漁業者が怒っている」、「市民団体が反対集会を開いた」、また「別の第三国が放出に懸念を表明した」とか…。
報道内容は、放出を否定する動きが目立つ。このスタイルは、ほかの例で紹介すると、沖縄県名護市・辺野古への米軍基地移転問題についての報道とよく似ている。自分たち、つまり、中国の主張に合った出来事、動きを中心に報道するスタイルだ。
そういう報道を見聞きした中国の国民は、日本への反発・反感を強めていく。中国のニュースサイトの載っている読者の書き込み欄には、ここで紹介するのをためらう表現で、日本を非難している。そして、中国当局もそれを容認している。














