介護の現場は、利用者が増える一方で、介護職を募集しても集まらず、人手不足は深刻です。そんな中、欠かせない存在となっているのが外国人の介護職です。専門的な知識・技術を身につけた外国人の力が多くの介護現場を支えていて、長く働き続けてもらうための模索が進んでいます。
「汽笛がぼーっと鳴りました」
静岡県富士市にあるグループホーム「2人3脚」です。認知症などがあるお年寄りがスタッフの支援を受けながらグループで自立した生活をおくっています。
「笑って。かわいいよ。かわいいよ」
Qこれはいま何をしている?
「3時のおやつのために準備しています」
Q飲み込みやすくするためですか?
「そうでございます」
調理をしていたのはミャンマー出身の職員。技能実習生として来日し、介護の知識・技術、言葉づかいも学びました。
「いまからおやつの準備やります」
利用者それぞれの体の機能、症状の程度などを把握し、日本人スタッフと比べてもそん色ない活躍ぶりです。
<利用者>
「すごくみなさんしっかりしていて、何でもよく分かります。言葉もみなさん上手です」
介護の現場は人手不足が深刻で、外国人の職員がなくてはならない状況です。
<「2人3脚」運営愛心援助サービス 石田友子社長>
「本当に助かっています。とってもやさしいでしょ。お声の掛け方とか」
「福祉・介護の職業」で県内の有効求人倍率は4.10倍。介護ニーズはあるのに人手が集められない状況です。(※静岡労働局2023年8月29日発表=2023年7月分)
<「2人3脚」運営愛心援助サービス 石田友子社長>
Q.日本人の若者、学校を卒業してすぐ就職する方は?
「前には入ったことがあるが、やはり長続きしないことが多い。入ってほしいけど」
スキルアップして戦力となっている介護職の技能実習生ですが、ずっと働き続けてもらうことができません。
「技能実習生」としての在留期間は最大で5年。「特定技能」に移行してもあと5年。最大10年で帰国しなければいけません。施設は、育ててきた外国人職員にできる限り長く働いてもらいたい。
そこで、もっと長く日本で働きたい技能実習生たちは、滞在期限がない国家資格「介護福祉士」の取得を目指しています。
富士市五味島にある社会福祉法人「岳陽会」の一室。
「介護福祉士」国家試験を受験するために、必ず受講しなければならない講座「実務者研修」が行われていました。日本人に交じり、ベトナム人6人、フィリピン人2人が参加。チューブやカテーテルを使用する医療的ケアを学び直していました。
<ベトナムからの技能実習生 マイさん>
「介護福祉士を取得したら、日本でずっと働くことができます。介護の仕事をするとき利用者さんが大好きだからずっと働きたいと思います」
<ベトナムからの技能実習生 シェットさん>
「ベトナムに帰っても、介護福祉士の資格を持っていれば、教えられるので、その仕事をやりたい」
受講料は、技能実習生の個人負担で公的な補助はありません。勤務先の介護施設は教材を用意するなど応援しています。
<鳩の家協同組合 石田幸樹理事>
「介護人材について人手不足というところで(行政は)予算を組んでいるが、外国人に向けてというところがまだまだ手薄になっていて、実務者研修の講座だとか、介護福祉士を取りたいと思っている外国人への支援をもう少し行政の方も考えてもらえたら、介護事業所としても、外国から日本に来た外国人としても良かったと思えるんじゃないかな」
この実務者研修に参加していた静岡大学の比留間洋一特任准教授は「技能実習生の介護福祉士資格の取得は、技能実習生にとっても、受けれ先の介護施設にとっても、実習生を送り出した国にとっても、トリプルウィンになる。外国人への実務者研修は先駆的な取り組みで、政策的に推し進めるべき」と話していました。
介護分野では「団塊の世代」が後期高齢者となることで、介護現場を支える人材不足が一層深刻になる「2025年問題」も懸念されています。
外国人の介護職人材が活躍しやすい環境・制度が、いま求められています。
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