◆「正しいこと」とは何か?

この本は去年の秋に集英社から出版されたんですが、僕は発売されてすぐ読みました。本の中に登場する「太陽の子」はもちろん、彼らの人権を守るために尽力している日本人シスターや、三浦さんと活動をともにした現地の日本人など、登場人物のみなさんが今もずっと僕の胸の中にいます。それぐらいの鮮やかな印象と輪郭を残してくれた本なんです。

本の中にも書かれていますが、三浦さんは常に「正しいこととは何か?」を探し続けています。「正しいこと」を見つけにくい時代、それがままならぬ時代や国に生きているからこそ、正しいことを探り、それを提示することをやめたくないと僕に語ってくれました。

◆「Right」は難しくても「Fair」なら手が届くはず

英語にすると「Right Thing」である「正しいこと」は人それぞれ立場によって違うので、難しいと思います。ですが、「Fair」、つまり公平であるかどうかを考えることは、まだ「Right」よりは手が届きそうな気もします。

だから、公平かどうかというところを手がかり足がかりにして、「Right」を希求していくということが必要なアプローチなのではないか、と僕は本を読んで思いました。

◆「声の小さい人々の声を拾い集める」のが記者の職務

声の大きい人もいれば小さい人もいるというのがこの人間社会で、三浦さんは職業記者として、この「声の小さい人」の声を拾い集めるのが職務だと明言しています。

三浦さんはもともと、今回本にした内容をまず、所属先である朝日新聞に掲載しようとしました。ところが社内の編集会議でそれが通らなかったのだそうです。それでもこの問題を伝えたいという思いから、まずツイッター(X)で、36連投しました。さらに、時間をかけて他社である集英社からの出版に漕ぎ着けます。

それがさらに新潮社というまた別の会社から賞を与えられた。この国のジャーナリズムを支える人たちは頑張っているんだなと思わせる、そういう本でもあります。