栃木県宇都宮市で8月26日、次世代型の路面電車LRTを採用した宇都宮ライトラインが開業した。日本で初めて全線新設で開業するLRTを利用し、高齢化が進む新しい都市のモデル作りを目指している。

全線新設開業は国内初。人口減少社会での生き残りモデルに

栃木県宇都宮の市街地を駆け抜けるLRT。市街地を抜けると広がるのは田園風景。さらに鬼怒川も見渡せる。JR宇都宮駅東口と隣の芳賀町の工業団地の間、約14.6キロを結ぶ次世代型の路面電車LRTだ。定員は160人、料金は150円から400円で距離によって変わる。

路面電車としては国内では75年ぶりの開業となり、中でも低床式車両のLRTとしては全線新設での開業は国内初となる。ホームとの段差がなく、高齢者やベビーカーでも利用しやすい設計になっている。

走行中の揺れは少なく、座席の幅も広いため、快適な乗り心地だ。動力となる電気はバイオマス発電や再生可能エネルギーを使用しており、環境にも配慮している。

宇都宮市 佐藤栄一市長:
経済の循環、共生社会、脱炭素社会、これらをデジタルや人の力で次の世代、あるいはその先の世代でも宇都宮を支えながら発展できる。人口減少社会の中で生き残りをしていける一つのモデルになればいいなと思っています。

宇都宮市は2017年をピークに人口減少に転じており、2023年現在は約51万人まで減少。他の地方都市と同様、高齢化が進む中、高齢ドライバーも増加している。宇都宮市では長年、駅から工業団地にかけて慢性的な交通渋滞に悩まされてきた。街の中心地から車で通勤する場合、通常25分ほどで移動できる道も、朝の通勤ラッシュ時にはバスで1時間前後かかり、駅を起点とするバスも渋滞により定時運行ができず、利用者は減る一方だった。そこで、宇都宮市は財政面を考慮した上で、渋滞でも定時運行ができるLRTを採用した。車やバスで通勤していた人が、LRTに乗り換えることで、渋滞は解消される見通しだとしている。

これまでのバス路線を再編し、LRTを軸に宇都宮市内を公共交通機関で網羅できるようにする。

宇都宮市 佐藤栄一市長:
最終的な目的はスーパースマートシティ宇都宮。コンパクトな街を複数作って公共交通で結び、誰もが自宅から自由に自分の力で移動ができる。バスもLRTも地域内交通も互いに共存できるという町になっていく。これからの日本の社会に合ったまち作りをいち早くやっていこうと考えています。

宇都宮駅東口から約4キロの路上の信号に見慣れない黄色い矢印が灯った。「電車用」との看板がついている路面電車用の信号だ。開業に先駆け、車のドライバーに慣れてもらうようにLRTは試運転を行っていた。LRTの運行には運転士の育成も必要だが、栃木県内には実際に運行している路面電車はない。LRTの運転に必要な免許の取得や訓練のため、広島県や富山県など全国八つの路面電車事業者に出向して経験を積んできた。

宇都宮ライトレール 武井宏祐運転士:
まずは安全第一というのが私の役目なので、電車をまずは安全に走らせて、多くのお客様の笑顔を乗せてこの宇都宮の町を走り抜けたいと考えております。