福島第一原発に並ぶタンク…処理水の7割近くが“排出基準値”超え

福島第一原発に並ぶ1046基の巨大なタンク。
東京電力は1日90トン、今も発生している汚染水を浄化処理して貯めてきた。
浄化処理に使うのがALPS(アルプス)。
東京電力によると、セシウムやストロンチウムなど、トリチウム以外ほとんどの放射性物質を取り除けると説明してきたという。

そして8月24日から始まった処理水の放出。
東京電力はトリチウムの濃度を国の基準の40分の1未満にまで薄め、海底トンネルを通じて沖合1キロから放出すると説明している。

また、トリチウムは世界の原発や関連施設からも放出されていて、福島第一原発からの量が特別に多いわけではないとも主張。
放出設備が壊れたり、トリチウム濃度が基準を超えたりした場合には、遮断弁を作動させ、放出を止めるとしている。

だが、課題もある。
実は、タンク内の処理水は一度はALPSで浄化処理をしたものの、7割近くはトリチウム以外の放射性物質も取り切れておらず、排出基準値を上回っているのだ。
東京電力の担当者は…
東京電力 リスクコミュニケーター 高橋邦明氏
「134万トン位の水を保管していますが、66%位は基準を上回る水になっている」

この基準値超えが発覚したのは2018年になってから。
東京電力は説明不足を謝罪。国の専門家会議や公聴会でも問題になった。
公聴会の参加者
「トリチウム水だと思ったらトリチウムじゃない水だった。この公聴会、前提がおかしいです。やり直してください」

中でも「J1-D」と呼ばれる9基のタンク内の処理水は、排出基準を1万4000倍も上回る。
最初の頃、ALPSで処理したものの、フィルターの不具合で骨にたまりやすいストロンチウムなどが残ったためだ。
膳場キャスター
「再処理すれば基準超の核種を取り除ける?」
東京電力 リスクコミュニケーター 高橋邦明氏
「ALPSの設備につきましては、基準以下に取り除けるという性能がある。今、基準を上回っているものも、再処理すれば基準以下に落とすことはできる」
30年かかるとされる海洋放出。
処理水がゼロになる時期を聞くと…。
東京電力 リスクコミュニケーター 高橋邦明氏
「(処理水が)ゼロになるまでは具体的な計画はまだ決まっていない。廃炉の期間、ずっと取り組んでいかなければならない」
元原子力委員会委員長代理の鈴木達治郎・長崎大学教授は、処理水について…。
元原子力委員会委員長代理 長崎大学 鈴木達治郎 教授
「他の国が危険だ危険だという説明には賛成しないが、中にはまだ放射性物質が入っていますので、純粋のトリチウム水とは違うものとして扱わなきゃいけないと思う。他の国の原発や施設からトリチウム水が大量に流れているからこれも大丈夫だという説明は私は間違っていると思う」

説明や放出には、今以上の慎重さが求められるという。
長崎大学 鈴木達治郎 教授
「(ALPSで)二次処理すれば確かにきれいになっていくと思うので、半年なり1年なりALPSがきちんと動きます。出てきた処理水は明らかに基準値以下になると、書類ではなく実際にやってみてデータを公開するプロセスがあって、初めて本格的に放出を始めましょうとなるのが筋だと思う」
放出する処理水のモニタリング方法についても疑問を呈す。
長崎大学 鈴木達治郎 教授
「地元の方が信頼できる第三者機関を設け、ウォッチ・監視する仕組みを作る必要がある。前代未聞の作業なので、ALPSが本当に30年間、順調に動くのか、トラブることはないのか、トラブった時に情報公開されるのか。安心感や信頼感がまだ得られていない」