漁師の日記 “最初から海洋放出ありき” “無力感しかない”
高野さんは16歳で漁師になって以来、56年間、毎日日記をつけている。
2016年、東電の説明会で汚染水放出について「別の海域へ出す方法はないのか」と問いただしたが…
高野さんの日記
「国際条約、海洋汚染防止法とかクリアしなければならないとか、明言はしない。解答は示さず」

質問書を送ると、解答の「案」と記した文書がただ送られてきたこともあった。
文書より
「関係者への丁寧な説明等、必要な取り組みを行うこととしており、こうしたプロセスや関係者の理解なしにはいかなる処分も行なわず」
高野武さん
「いくら追及しても『丁寧な説明をします』の一点張りで、それ以上の説明ってない」
そして、2021年…
菅義偉総理(2021年 当時)
「2年後をめどに海洋放出を開始する予定であります」
政府は処理水の海洋放出を決定。
その日の日記には苦しい胸の内が記されていた。
高野さんの日記
「最初から海洋放出ありきで進めていて、我々の意見を聞いてもなんら解答もなく、無力感しかない」

高野武さん
「やっぱりその辺のやり方というか方法を考えれば、不信感はだんだん増えていくんですよね。これはずっと蓄積ですから」

請戸漁港では3年前に競りも再開。
この時期、水揚げされる魚はタイやヒラメなど。
「常磐もの」と呼ばれ、市場で高い評価を受けてきた。
仲買人で料理人の川瀬洋さん。
請戸の魚介にほれ込み、港から65キロ離れた二本松市から仕入れに来ている。
仲買・料理人 川瀬洋さん
「(漁師が)船上に水揚げしてからここまで持ってくる過程で、魚の鮮度を下げないように、下げない持って来かたをする」

川瀬さんが営む飲食店。
24日、処理水放出後も新鮮な「常磐もの」を求める客でにぎわっていた。
川瀬洋さん
「身質も違うし歯ごたえも違うし、味は僕は請戸の魚の右に出るものはないと思う」
客「新鮮さが違うかなと思います。だからいろんな人にも食べてほしいなって思うし。(処理水で)福島県産とかのものが食べられなくなるのは嫌だなって思う」
客「漁業関係の人たちって大変だと思うんですけど、逆にちゃんと検査して出てきてるかなと思って食べている」

福島では県の検査のほか、漁協が出荷する全ての種類の魚の検査をしていて、基準値を超える魚が流通することはない。
川瀬洋さん
「僕たちが今度アピール・PRしていかなきゃなんないよね。やっぱりその鮮度の良さ、安全なんです。積極的に今まで通りに全量検査全てして出荷するわけですから」