絶対に成し遂げたい日本選手権での代表入り

打倒・泉谷の一番手は、順大の2学年後輩の村竹だ。昨年の日本選手権予選で13秒28(+0.5)を出し、決勝で泉谷が13秒06を出すまでの間、学生記録保持者だった選手である。
今季は自己記録こそ更新していないが、4月15日の日本学生個人選手権、同29日の織田記念、5月8日のゴールデングランプリと3連勝している。記録は13秒43(+2.6)、13秒55(-1.5)、13秒34(+0.1)。特に評価できるのはゴールデングランプリで、参加標準記録に0.02秒と迫っただけでなく、東京五輪準決勝に進んだ外国2選手に勝っているのだ。
日本学生個人選手権の結果で一度はワールドユニバーシティゲームズの代表に選ばれたが、世界陸上への挑戦を優先するため、日程が近いワールドユニバーシティゲームズの代表を辞退した(ワールドユニバーシティゲームズは結果的に期日が延期された)。出場予定だった5月の関東インカレを欠場したのが気になるが、万全の状態で日本選手権に臨むために大事を取った、と見るべきだろう。

同じ順大で練習をする泉谷と村竹。冬期練習の間に力が近づいたと感じられる練習があるか、という質問が織田記念優勝の村竹に出ていたが「一緒に練習しないのでわからないです」と。泉谷は通常、跳躍ブロックで練習しているからだ。
しかしタイムの目標を問われると「13秒0台を出したいです。あわよくば12秒台を」と、泉谷越えを目標としていることを明かした。それだけ手応えを感じているのだろう。
村竹にはもう1つ、日本選手権に強い思いをもって臨む理由がある。昨年は前述のように予選で参加標準記録を破ったが、決勝でフライング失格をしてしまった。今年こそ日本選手権で代表を決める。ワールドユニバーシティゲームズの代表辞退は、その意思が強いことを示していた。
(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)