7月の世界陸上オレゴン代表選考会の日本選手権(6月9~12日)が大阪市のヤンマースタジアム長居で開催されている。男子110mハードルは人材が次々に台頭し、世界に近づいている種目。昨年の日本選手権では泉谷駿介(22・住友電工、当時順大)が13秒06と、21年世界リスト5位のタイムで優勝した。ところが今季は、故障のため屋外では織田記念(4月29日)の予選しか走っていない。すでに世界陸上参加標準記録(13秒32)は破っているので、3位以内に入れば代表に内定する。今年も記録を狙える状態なのか、3位以内を目指す安全運転になるのか。

一方、ゴールデングランプリ(5月8日)に優勝した村竹ラシッド(20・順大3年)は、そのレースで13秒34(+0.1)と標準記録に0.02秒と迫った。日本選手権で2人目の標準記録突破を狙っている。

注目される故障明けの泉谷の戦い方

走幅跳の橋岡優輝(23・富士通)と同様、世界トップレベルの泉谷がどんな代表の決め方をするか、に注目したい。

今季の泉谷はまだ、全力で110mを走り切っていない。3月の日本選手権室内60mハードルの3台目でハードルに激突し、リード脚の左足首三角靱帯を捻挫してしまった。

4月29日の織田記念前日の会見では「違和感がある程度。走れている」と話したが、翌日雨の中で行われた予選を14秒10(-1.3)で1位通過した後に決勝を棄権した。その後のゴールデングランプリなどにも出場していない。


織田記念の予選

日本選手権のスタートラインに立てば、かなり練習はできている、ということを意味する。まずは大会3日目に予選と準決勝が行われる。どちらかのラウンドで、無風に換算したタイムで13秒50以内で走ることができれば、4日目の決勝でタイムを上げて優勝争いができる。3位以内の可能性は高い。

予選・準決勝で13秒5以上かかるようだと判断が難しくなる。他力本願の形にはなるが無理はしないで、世界陸上出場資格選手(標準記録突破か1国3名までの世界ランキングでこの種目の出場枠40人以内)が3人以上現れない可能性をとるかもしれない。泉谷の本当の力を見たいのは7月の世界陸上だからだ。

東京五輪の泉谷は予選で13秒28(-0.2)の五輪日本人最高をマーク。準決勝でも13秒2台を出せばこの種目日本人初の決勝進出も可能だった。

だが準決勝は、何台もハードルを引っかけてしまって3組3位。その組の着順であと1人、全体の記録であと2人で決勝に進出できた。残念ではあったが、泉谷の力が世界レベルであることを証明した。

世界陸上でも決勝に進めば日本人初の快挙であることに変わりはない。日本選手権で無理をして、代表を決めてもケガを悪化させたら世界陸上には間に合わない。万が一万全の状態でないなら、歴史的なシーンをオレゴンで見られる可能性を上げる選択をしてほしい。
もちろん、今大会で無理をしないで勝てるようなら、それはオレゴンが期待できることになる。泉谷がどんな戦い方を選択してオレゴンへの道を進めて行くのか。日本選手権はそこに注目したい。