世界陸上ブダペスト大会で開幕初日19日、最初に決勝が行われる男子20km競歩。日本初の3連覇の偉業に挑む山西利和(27、愛知製鋼)が出場する。京都大学出身という異色の経歴を持つ山西が初めて出場したカタール・ドーハ大会(2019年)を前に高橋尚子キャスターの前で流した涙、その理由を取材した。

高橋尚子キャスター:
山西選手といえば、京都大学物理工学科。分析をしてデータ収集をして、細かい作戦を立てるのも1つの大きな武器になると思うんですけれども。
山西利和選手:
たいしたデータ管理ではないんです。テレビの脚色も入っているんです。こんなことテレビでいうのはあれなんですが(笑)。
高橋キャスター:笑
山西選手:
大会前の数か月、どういうことをしていたのか、危機感の管理と安心感の管理と、そういうことを見返すことができたりする瞬間はありますね。
競技か?就職か?すぐに出せなかった答え
高橋キャスター:
競歩に進むのか、それとも京都大学から普通に就職をするのか、色々な選択肢があって、そういったときに自分の中で迷ったり葛藤っていうのはなかったんですか。
山西選手:
迷いはやっぱりありました…かね、はい。なんか入ってそのときは日本代表のレベルじゃなかったので。そこのどうなるかわかんないけど、そっちに進むっていうのはすごく振り返ってみても、大きなポイントだったかなと思います。

高橋キャスター:
最終的に競歩を選んだのは何が決めてだったんですか?
山西選手:
やっぱり意思だと思います。本当になんか、なんて言ったらいいんでしょうね。ん〜オリンピックに出たいとか、世界一になりたいとか、そっちの意思の方にいったのかな。逆にいろいろそぎ落としていったら結局、最後はそこが残ったというそんな感じです。
「世界一になりたい」強い意志で競歩を続けた山西の分岐点は、社会人2年目。
カタールで行われた世界陸上の日本代表初選出。
高橋キャスター:
競歩を決心して選んだからこそ、(初出場の)世界陸上ドーハ大会の時は結果にものすごく執着じゃないけれども、すごく結果が欲しいんだっていう思いがすごく伝わってきたんですけれども。
山西選手:
そうですね。学歴がどうだったかとかっていうことは一切関係ないと僕は思ってるんですけど。純粋に陸上競技の世界で、結果を残さないといけないと思っていた。そういう話にけりをつけたいなという感じですね。スタートラインに立ったメンバーの中で誰が一番強いかを決めるっていう、その戦いでちゃんと勝たないと、このストーリーにもけりがつかないっていうそんな感じかな。
涙の理由は「弱いところをつかれたと思ってください(笑)」
初出場となる世界陸上の会見で「金メダルを取るということを最大のターゲットに」と力強く語った山西だったが、直後に高橋キャスターの前で号泣。

高橋キャスター:
2人で話していた時に、かなり大号泣しましたよね。
山西選手:
そうですね。
高橋キャスター:
覚えてますか?
山西選手:
はい。
高橋キャスター:
あれはあらためて今、ふり返ってどんな涙だったんですか?
山西選手:
あはは…そうですね。ちょうど両親の話になったんですよね。ちょこちょこ応援に来てるんですけど、カタールまで来るとはな~っていうのがあった(笑)。
温かみを感じたというか…はい。やらなきゃいけないなと、まあ弱いところをつかれたと思ってください(笑)。
高橋キャスター:
そういう涙だったんですね。
山西選手:
なんかこう何も成してないのに、家に帰るのがちょっと気まづいなと思う瞬間があったりとか、別に帰ったら普通に接してくれるしそれは僕が勝手に感じていることで、僕がその選んだチョイスに対して、まだいい結果を返せてないなっていう部分があったので。でもそれを別に、何となく何を言うことなく見守ってくれた部分はすごくありがたかった。
高橋キャスター:
ターニングポイントとしてはやっぱり大きかったですか?
山西選手:
社会人になって競技を続けていきます。っていうところのチョイスと、それに対するひとつの、まあ自分の中のですけど、答えがだせたのがドーハ大会だったと思います。
高橋キャスター:
そういった思いを含めて、今度のブダペストが始まるわけなんですけど。あらためて目標を教えてください。
山西選手:
まあ、金メダルと。シンプルにピュアに世界一を取るか取らないかだけの話。そこはまあ、ぶれなく頑張っていきたいなと思います。
高橋キャスター:
前人未到の3連覇を狙う自身ではどういうふうに感じてますか。
山西選手:
数字自体にとか、それをなんかすごく意識してるかと言われると、してるようなしてないような感じ。2連覇3連覇と言っていただけますけれども、そこは本当に一旦外して、この目の前のこの1本にどう集中できるかなというのが僕の意識の中では大事なことかなと思って。