物価の変動を反映した働く人1人当たりの実質賃金が15か月連続でマイナスとなった。賃金が物価に追いつかない状況が続いている。
賃金が物価に追い付かず高まる節約志向。百貨店や外食、旅行は堅調
8月11日にピークを迎えた帰省ラッシュ。羽田空港では、海外に向かう人の姿も多く見られた。久しぶりの帰省や旅行、そして花火大会などイベントの開催、人流の回復とともに消費熱が高まっている。消費の上向きは、決算にも表れている。三越伊勢丹ホールディングスの2023年4月から6月までの決算は、客足の回復に加え、インバウンド客の増加などにより大幅な増収増益。ファミリーレストランを展開するロイヤルホールディングスは、外食やホテル事業が回復し、中間期としては4年ぶりに黒字転換した。

一方で、物価の変動を反映した2023年6月の働く人1人当たりの実質賃金が、前年同月比で1.6%減り、15か月連続のマイナスとなった。現金給与の総額は46万2040円と2.3%増え、18か月連続の上昇だったが、賃金が物価に追いつかない状況が続いている。町では物価高が消費に影を落とし、節約志向が高まっている。

6月の実質賃金は1.6%のマイナスで、マイナス幅がまた拡大した。2022年からずっと実質賃金はマイナスだ。
――名目賃金は上がっているが、伸び率が前月よりも下がっている。

ニッセイ基礎研究所 チーフエコノミスト 矢嶋康次氏:
私どもは先々の経済を予測するのが仕事なのですが、もうちょっと賃金が伸びてもよかったなと思うのと、物価の高止まりが想以上に強いなというのが、予想する者からすると外れているなと感じます。

物価上昇分を引いた実質消費も減少し、6月はマイナス4.2%で、4月からずっと4%台のマイナスが続いている。魚介類がマイナス8.8、お菓子類がマイナス8.6と身近なところで節約している。一方で外食や旅行、イベントに行くようなお金は支出している。
――涙ぐましい努力が見て取れる。ただ足元、街には人も出ているし、旅行にもたくさん行っているし、イベントも賑わっている。
ニッセイ基礎研究所 矢嶋康次氏:
交通機関はどこで乗っても満員です。ホテルも予約が取れない、地方ではタクシーがつかまえられないという状況になっているので、人の動きを踏まえれば景況感はかなりいいのではないかなと思います。

景気ウォッチャー調査を見ても判断のわかれ目になる50を超えており、景況感は悪くない。猛暑が続いて夏物商材の動きが活発で、イベントが開催できるようになって人流が戻って賑わっている。各地の花火大会や音楽フェスにも大変な人が出て、消費は堅調だと言われている。
――今まで押さえつけられていた旅行や外食、娯楽には惜しみなくお金は使っているが、実入りが増えていないから節約できるところは節約しようとしているということか。
ニッセイ基礎研究所 矢嶋康次氏:
数年間いろいろなイベントができなかったので、今まで貯まっている部分で支出されていると思うのですが、足元の毎月毎月のところを見ると、実質ベースでマイナスになっているので、この消費がこれから先続くのかどうかというところに少し懸念が出始めているというのがこの一、二か月、日本経済を見る上でのポイントなのかなと。