ヘルニアで昨シーズンは絶不調
東京五輪が行われた昨年、サニブラウンは3試合にしか出場できなかった。5月に所属チームが拠点とする米国フロリダで100m、6月の日本選手権で100m、8月の東京五輪で200m。シーズン最高タイムは100mが10秒29、200mは21秒41と、別人と疑ってしまうような結果しか残せなかった。
東京五輪の際はハムストリング(太もも裏)の痛みという報道もされていたが、日本選手権開幕前日の会見で「去年はヘルニアだった」と明かした。
「去年は体がガタついている状態で、痛みとずっと戦いながら走っていました。腰のケガで体全体の感覚が敏感になっていた。神経に痛みを感じて、腰もそうですし、腰が張ることによってハムストリングも張ったりしますし、筋肉はつながっているので色んな支障が出ました。しょうがないな、という部分と、そういう状況でも結果を出せる強い選手になりたいな、という気持ちがありました」
現在は完治していて「心配はない状態」だという。「コーチと相談してリハビリや練習の仕方、メニューの組み方と、色々と模索してやってきました」。
3月19日と4月30日にフロリダ、5月12日にプエルトリコと、今季は3試合を消化。プエルトリコでは10秒21(-0.2)でT・ブロメル(アメリカ)に0.29秒差をつけられての5位。まだまだではあるが、3月の10秒15(+0.4)は今季日本最高タイムで、4月は追い風2.1mと0.1mの違いで参考記録にはなったが、10秒08の好タイムで走っている。
「10秒08の試合の後はスピード練習をもっと入れてきました。調子に関しては上がる一方なので、やるべきことをやればタイムは勝手に出るかな」
やるべきことをやる、というのはサニブラウンの基本姿勢だ。必要以上にタイムは意識しなくても、課題を練習し、それをレースでもそのまま出す。今回と同じヤンマースタジアム長居開催だった19年日本選手権でも「やるべきこと」に徹して、予選・準決勝・決勝と10秒0台を3レースそろえて優勝した。