「逆転するチャンスが来た。私たちは10万円で作る。中国企業は7万円で作る。でも物流コストと保管コストを加えると12万円になる」

続いて取材した企業は、業務用の厨房機器メーカー『ハイサーブウエノ』(新潟・三条)。

23年4月に新たな工場を本格稼働させたが、投資額は12億5000万円で過去最大の設備投資だという。そこには最新の工作機械とロボットが導入され、生産性の向上と生産量の大幅アップを可能にしている。しかし、なぜ今なのか…そして何を狙った決断なのか…

『ハイサーブウエノ』 小越元晴 社長
「飲食店さんの出店が戻ってきていて、生産量を増やしていくことが必要だと思い、そこに投資をした。生産量を3倍にしたいと思っている。そのために3倍人を入れたら生産性は上がらないので、ロボット化できるところは進めてイメージで言うと3倍の生産量。でも人材は1.5倍しか増えていませんよ、と…。」

コロナで出店を抑えていた大手外食チェーンからの受注が、いま急増しているという。

しかし、小越社長が大胆な設備投資を決断した理由は、もう一つある。実は、今こそライバルの中国企業を逆転するチャンスだと強調する。中国企業は人件費の高騰など製造コストが上昇し、輸送費などを加味すると、もはやかつてのような競争力を持っていないというのだ。

『ハイサーブウエノ』 小越元晴 社長
「今もう日本の方が安いんです。出荷額では私たちは10万円で作る。中国企業は7万円で作る。でも物流コストと保管コストを加えると12万円になる。明らかに私たちのコストが安い。中国から戻ってきた仕事が結構くる。この2年間毎年5%の昇給もしてきました。やっぱり優秀な人間を多く採るためにも初任給も上げています。これからも継続的に昇給はしていきたいと思っています」

今がチャンスだと見込んで攻めに出たハイサーブウエノの小越社長。過去最大の設備投資という決断を、加谷氏はこう評した。

経済評論家 加谷珪一氏
「設備投資の額は経営が変われば結果的についてくるもの。経営者のマインドが変わって、ビジネスモデルを変えなければいけないとなると先行投資が必要。経営さえ変われば確実に増えてくる。」

今年度の設備投資は過去最高で、しかもほとんどの業種で増えているということだが、日本の経営者が攻めの姿勢を強めているのか。これまでのように内部留保を溜め込んでいるとインフラになったら価値が目減りする…だから投資に向かうという動きなのか…。

経済評論家 加谷珪一氏
「半分半分で一つは本当に前向きな経営戦略だが、インフレだからやっぱりやらなきゃでもいいと思う。溜め込んで何もしないよりは、果敢に攻めて投資するお金が経済を回すわけですから。」

一方、こんな事情もあると志賀氏は指摘する。

元日産COO 志賀俊之氏
「日本の工場ってみんな老朽化しています。老朽化ってどういうことかっていうと人を必要とする工程が多い。人手不足になってきているので設備の更新が必要(ロボット化が必要)…。特に自動車産業はアCASEという100年に1度の大変革が起きてますから…。その転換期にお金を使って設備投資しなければ勝負にならないです…」