「(ロシアから石油を買う理由…)一言で言えば“利益”。経済的判断…」
実は今年の2月以降、世界第2の産油国であるサウジアラビアがロシアからの石油製品の輸入を急増させている。そもそもサウジアラビアとはどういう国なのか…。世界有数のエネルギー関連の調査会社『アーガス・メディア』の中東支局長は“サウジはいかなる制裁にも拘束されない”、何をするにしても自国の利益を最優先に考える“サウジアラビア・ファースト”だと語る。
『アーガス・メディア』 ネーダー・イタイム 中東支局長
「2月以降、つまりEUの石油製品輸入禁止措置が発動されてからサウジアラビアがロシアの軽油を国内向けに輸入するようになった。去年は実質ゼロだったのが、今は1日当たり約8万バレルになっている。重油はこれまでもロシアから輸入していたが、今年と去年で比較すると約4~5倍に増えている。(中略~ロシアから買う理由)一言で言えば“利益”。経済的判断だ。ロシア産の石油製品が大幅な値引きをされているから輸入を増やし、国内で使用することができる。大幅に安いロシアの石油製品を輸入して、その分、サウジ産の石油製品を多く市場価格で輸出できるようになる」

西側が設定したロシア産原油の制裁上限価格は1バレル60ドル。一方、市場価格は現在1バレル80ドル台。この価格差がそのままサウジアラビアの利益となる。さらに…。
『アーガス・メディア』 ネーダー・イタイム 中東支局長
「戦争によってヨーロッパなどがロシアからの石油製品の輸入を止めたことで、ヨーロッパ市場が開かれるという新たなビジネスチャンスが生まれた。サウジではヨーロッパへの販売を増やすと同時に東アフリカへの販売も増やした。(その分国内需要として)ロシアからの輸入は当然の判断だった。(中略)アメリカなどの制裁や上限価格設定の目的は、ロシア産原油の量を制限することではない。ロシア政府に入る収入を制限するのが目的だ。つまり、大幅に安くなったものを買うのであればロシアへの制裁が機能していないわけではない。目的は実現している。サウジアラビアは、ムハンマド皇太子が前面に出てきてからは外交においてもエネルギー政策においても“実利に、より機敏な国”になった」
確かに上限価格設定という制裁の目的に反していないので、同盟国アメリカにとやかく言われることもなく、経済的には”錬金術“ともいうべく巧いシステムで利益を生み出しているサウジアラビア。ロシアにとっては、どんな存在なのだろうか。
防衛研究所 兵頭慎治 研究幹事
「(ロシアにとって)安くても大量に買ってくれる。今までは中国とインドがそうだったが、新たに今年からサウジアラビアが加わるということになると、安くても売れるというのは非常にありがたい。これまでもサウジアラビアとロシアの関係は石油に関わる実利的な関係だった。OPECプラスロシアという枠組みで減産を一緒にやったり…。ある意味サウジの実利外交にはロシアも期待している」
