森林資源の有効活用を目的に県や塩尻市、民間が連携した事業「信州F・パワープロジェクト」の中核となっていた松本市の征矢野建材(そやのけんざい)が9日、民事再生法の適用を申請しました。
これまで23億円余りの補助金を支出している県は事業の継続に向けた支援チームを発足させることになりました。


塩尻市片丘(かたおか)にある「ソヤノウッドパワー発電所」。

間伐材や製材工場から出た端材を燃やして発電する木質バイオマス発電施設で、征矢野建材は発電所に出資、さらに燃料となる木材の調達を担っていました。


「信州F・パワープロジェクト」は資源の有効活用や森林の再生、林業の活性化を目的に県と塩尻市、征矢野建材が連携し、11年前から進めてきた事業です。

発電施設は2020年に稼働、これに先立って県は征矢野建材に対し、併設する製材所や機械の費用など、23億円余りを補助しています。

発電開始から3年足らずでの、プロジェクトの中核企業の退場。

阿部知事は…

「これまで大変な尽力いただいている。県としても真摯に受け止めている」

プロジェクトに加わる塩尻市も、周辺の道路の改良などでこれまでに7億円余りを投じています。

地元住民:                                              「需要は確かにあると思う。発電するにはそれだけのもとの材料が必要だと思うがそれが果たして供給されているかどうか不透明な点がある」                                 「先が見えてこないから地元だからって関心が特にあるわけじゃないです。始めたからには何とか軌道に乗せてもらって」

百瀬塩尻市長は・・・。


「事実は事実としてきちんと受け止めております」                              「事業が目指す森林資源の活用であり木材産業の振興、環境問題等は正しいと思っているので事業が続いていくよう県と連携して進めてまいりたい」

民間の調査会社によりますと、征矢野建材は、発電所事業に伴う借入金の返済で2018年には債務超過に。

追い打ちをかけたのは、全国的な木材不足によるコストの上昇だといいます。

業界団体が今年1月、全国の木質バイオマス発電所に行ったアンケートでは、回答した施設の4割近くが「計画通りに稼働できていない」とし、要因として最も多かったのが「燃料の不足」でした。

県もかかわる今回のプロジェクトをめぐっては、年間18万立方メートルもの木材を必要とする計画が適正だったのかどうかとの指摘も出ています。


阿部知事:                                                「いろんな皆さんのさまざまな見方はあろうかと思う。そうした見方は受け止めなければいけないが、各事業者が総合的に経営判断をしながら事業を進めてきたと思っている。私が全体を安易に総括するのはなかなか難しい」

県はプロジェクトの継続を支援するため弁護士など外部の有識者を含めた支援チームを立ち上げるとしています。

征矢野建材に対しては、綿半ホールディングスがスポンサーとなり、再生を支援する方針です。

調査会社によりますと征矢野建材の負債額はおよそ65億円で、今年になってから県内で最大だということです。

征矢野建材は取材に「弁護士に一任しているためコメントは差し控える」としています。