ウクライナ戦争は“ドローン戦争”の様相を呈してきた。ロシアによるウクライナ各地へのドローン攻撃はミサイル不足もあって攻撃の中心になっている。一方、ウクライナ側もドローンによるロシア領内への攻撃を激化している。ゼレンスキー大統領は言う。「戦争はロシアの象徴となる拠点や軍事基地に戻りつつある。これは避けようのない自然で絶対的に公平なプロセスだ」ロシアの象徴となる拠点とはクレムリンか…。その言葉通り7月だけでモスクワ州へのドローン攻撃は4回、計11機にのぼった。そして今、さらにエスカレートするドローン事情に目を向けた…。
「ドローンの弾薬は軽さが重要で、グラム単位で作ることが大事」
ウクライナ軍戦略コミュニティーセンターがSNSに投降したアニメーションがある。ロシア軍の攻撃で家を破壊された男性が、ウクライナ国旗と家族が描かれた画用紙で紙飛行機を折り、飛ばす…。紙飛行機はやがて何機ものドローンに姿を変え、ロシア領内各地に飛来。最後はモスクワを炎上させ、その日は8月24日、ウクライナの独立記念日だとアピールする。

今回の戦争でウクライナは様々な映像を発信している。各国メディアが取り上げることで、ウクライナの訴えが世界に拡散する。このアニメは、今後はロシア領内、特にモスクワへの積極的な攻撃を仕掛けるという宣言のように見える。これはゼレンスキー大統領の発言にも符合する。そして、攻撃の手段はドローンであることも明確にしている。
ウクライナのフェドロフ副首相は、ドローン軍団国家プロジェクトの寄付金で購入した1700機の攻撃用・偵察用ドローンを公開し、これらのドローンが兵士の命を守り、敵を破壊するために戦地に送られると語った。大量のドローンが戦争の主役になりつつあることは間違いない。
となると、ドローンに搭載する弾薬の増産が必至となる。番組では弾薬製造部隊を直接取材した。

ウクライナ・ドローン弾薬製造部隊『スチールのスズメバチ』 ハサン氏
「ドローンの弾薬は軽さが重要で、グラム単位で作ることが大事なんだ。(中略)はじめは戦利品として獲得したロシアのクラスター爆弾の子爆弾をドローン用に改造して使っていたが、従来の弾薬を改造するのはリスクを伴う。(中略)従来の弾薬はアルミかスチールの丈夫なケースが使われていた。そのため弾薬が重くなる。そこで私たちはプラスチックやカーボンの複合素材を使った。ドローンでは1400gは運べても1600gは運べない場合がある」
搭載できる重量が決まっているため、ケースを軽くすればそれだけ火薬の量を増やせる。つまり威力が増す。更に弾薬を軽くすることでより遠くまで飛ばすことができる。
ハサン氏が見せてくれた弾薬は、1リットルの水筒ほどの筒で、重さ1200g、その中に火薬、弾、着火装置全て収まっているという。次に見せてくれたのは、重さ500gで小型ドローン用だった。『榴散弾』といって筒の中に火薬とともに小さな弾が大量に仕込まれていて爆発とともに飛び散り歩兵を殺傷する。

ウクライナ・ドローン弾薬製造部隊『スチールのスズメバチ』 ハサン氏
「他にも『成形炸薬弾』もある。これは戦車や装甲車に穴をあけるための弾薬。上から攻撃した時だけ敵の兵器に穴をあけることができる。原材料の費用がかなり高いので様々な部隊や軍に資金提供している財団と連携している。資金提供のおかげで弾薬を作れている…」
今月ウクライナは新規産業の民間企業もドローン用の弾薬が製造できるよう閣議決定し、弾薬の増産体制を築いた。
ウクライナ・ドローン弾薬製造部隊『スチールのスズメバチ』 ハサン氏
「増産が期待できると思う。多くのメーカーが参入するだろう。私たちは(突入して爆発する)カミカゼドローンではなく、(繰り返し使える)爆撃機のようにドローンを使いたい。ドローンの数が足りない問題があるから、(増産可能な)弾薬を落とすだけにした方がドローンの節約になる」
一方、ロシアもドローンの量産に力を入れている。かねてから大量に輸入していたイラン製ドローン『シャヘド』。これを国内製造するため、連邦内のタタールスタン共和国に『シャヘド』製造工場を完成させた。アメリカの情報当局者も「ロシアは今後桁違いに大量のドローンを備蓄する可能性が高い」としている。