名古屋駅前のワゴン販売を任されていたのが、玉木浩人さん(59)と、妻の千夏さん(56)。

二人はことし2月まで東京で暮らしていましたが、観光で立ち寄った犬山市でたまたま「ココトモファーム」を知り、どうしてもここで働きたいと志願しました。

(妻・千夏さん)「スタッフの皆さんの表情が、笑顔がとても素晴らしかった、ここで働きたいと思った」

(玉木さん)「差別もなく、できなければいいよと理解しているその状況が素晴らしいと思った、すぐに社長に連絡を取った」

社名の「ココトモ」は、「ここでトモダチになろう」の意味。シンボルマークの様々な色のモザイクには“どんな人にも居心地の良い場所”という思いが込められていて、社員のおよそ1割に何らかの障害があります。

ストレスが元で声が出せない「失声症」や…急に眠りこんでしまう「ナルコレプシー」など症状は様々。

それでも、ココトモファームには障害を気にするスタッフは誰もいません。

(ナルコレプシーを患うスタッフ)「みんな本当にいい人で、体調が悪くなったときも精神面でのケアもしますと話してくれて、ここが居場所だなと」

ADHDの社長が障害者を積極的に雇うワケ「みんなにとって居心地の良い職場を作りたい」

社長の齋藤秀一さん。障害者を積極的に雇う理由に、10歳下の弟・武人さんの存在があります。

自らもADHD=注意欠陥・多動性障害で幼い頃からいじめられ、不登校だったという齋藤さん。一緒に遊んでくれる弟が、唯一の心の拠り所でした。

(齋藤社長)「仲良かったですね、遊び相手が弟だったので…」

ところがその武人さんが、大学生の時「統合失調症」を発症。もう20年以上、幻聴や幻覚に苦しみ、他人とコミュニケーションが取れない状態が続いています。

(齋藤社長)「ひどいときは暴れてしまったりとか、架空の人物がいてその人と話していたり…。弟が重い障害を持っているので、家族の立場でもなにか一緒にできることないかなと」

自分に居場所をくれた弟のために、今度は自分が「弟の居場所」を作りたい。そんな思いから3年前、ココトモファームを立ち上げました。武人さんはいま、掃除やコーヒーを入れるなど、自分のペースで働いています。