■「戦争は、軍需産業の在庫一掃セール」

戦争が武器の見本市であり、戦場が性能チェックの場であることは紛れもない現実だ。

しかし、一方で西側からウクライナに大量に供与されている武器は、必ずしも新しいものではない。例えばアメリカは対戦車ミサイル“ジャベリン”を5500基以上ウクライナに供与している。​地対空ミサイル“スティンガー”は1400基以上だ。


だが、元陸上自衛隊の渡部氏はこう話す。

渡部悦和 元陸上自衛隊東部方面総監
「これはいつの戦争もそうなんですが、ジャベリンにしても結構古い兵器なんです。スティンガーなんていうのはもっと古く、何十年も前の兵器。こういった物を各軍需産業は持っているわけです。これを戦争の機会に在庫を一掃する。処分のチャンスと・・・」

対ウクライナにおいては、ジャベリンもスティンガーもアメリカ軍が保有していたものを提供したというが、アメリカ軍の在庫がなくなれば、軍需産業に新たな武器を受注することになるのは自明である。そして今回のアメリカによる多額の軍事援助は、アメリカの圧倒的軍事力を世界に見せつける結果となったことは間違いない。その逆となっているのはロシアの軍需産業だ。

■「ロシアをもの凄く小さな国にしてしまおう」

兵器、防衛装備品等の販売額を見てみると次のようになる。
① アメリカ 約36兆5000億円
② 中国   約8兆5000億円
③ イギリス 約4兆8000億円
④ ロシア  約3兆4000億円
⑤ フランス 約3兆2000億円
⑥ 日本   約1兆3000億円


アメリカだけが圧倒的だが、ロシアも4位に名を連ねている。だがその地位が今崩れようとしている。ロシア製の武器の輸出先は現在、インドが28%、中国が21%、エジプトが13%だ。この状況がどう変わろうとしているのか?
 

拓殖大学海外事情研究所 佐藤丙午 副所長
「活況を見せるNATOの軍需産業の裏返しです。ロシアの兵器システムに対する信頼感が徐々に失われていくと思います。(中略)アメリカの武器の売り方は、“ネットワークで戦争を戦う”という文脈の中で同盟国に武器を売っていくというシステム。ロシアは今回分かったように友達というか友好国がいないわけですから市場が限られる。技術面でも政治面でも軍需産業は苦労するでしょう」

ロシアの事情に詳しい兵頭氏も、ロシアはますます苦しくなるという。

防衛省防衛研究所 兵頭慎治 政策研究部長
「ロシアはエネルギー大国であり、武器輸出大国であり、この二つを輸出することで国家の財政を成してきた。エネルギーでは禁輸が進み、武器ではインドがロシア離れを始めている。理由としては、ロシア製兵器の信頼性の低さが実戦で明らかになった。ミサイルの命中精度が思いのほか低かったとか・・・。
もう一つは、半導体など電子部品の調達が西側の制裁で難しくなって、戦車などの生産も事実上止まっている。すると、インドなどロシア製兵器を買っている側にすれば、今後安定供給が難しいだろうと。ということでなおさらロシア離れが進む」

この事態をアメリカは千載一遇のチャンスとしていると話すのは渡部悦和氏だ。

渡部悦和 元陸上自衛隊東部方面総監
「アメリカが目指しているのは、ロシアを軍需産業も含めて徹底的にダウングレードさせようということ。ロシアが二度と軍事大国にならない、ものすごく小さな国にしてしまおうと・・・。そうなればインドや中国などロシア製の武器を買っている国はさらに大変な思いするでしょう」