「義務を果たさなければ、人権はない」と勘違いしている人が増えているそうだ。この現状を危惧しているというRKB報道局の神戸金史解説委員長が、RKBラジオ『田畑竜介 Grooooow Up』で、人権問題に長年取り組んできた弁護士へのインタビューが掲載された新聞記事を題材にコメントした。

◆「義務を果たさなければ人権はない」と思い込んでいる学生たち

数日前、ある大学の先生がネット上にこんなことを投稿していました。「法学部に入ってきた新入生に対して、人権について説明をしなければならない」と。義務を果たしてない人に人権はないと思っている学生が、結構いるからなのだそうです。

人権というのは元々誰でも持っているもので「義務を果たしてないから人権がない」という考え方はないのですが、親や教員からそう言われてきた学生たちがあまりに多く、法律を学ぶにあたってはその考えを改めることから始めなければいけない、と。

「はー…これはかなり問題だな」と思いました。基本的なことを一から教えないと、法律の勉強に入れないというのです。

◆旧優生保護法に基づく障害者への不妊手術の強制

7月17日と18日の毎日新聞朝刊(福岡版)に徳田靖之弁護士のインタビュー記事が掲載されていました(「連載 語る―弁護士・徳田靖之」)。ハンセン病国賠訴訟や薬害エイズ裁判など人権問題に正面から取り組んできた徳田弁護士にしっかり話を聞こう、という企画です。

びっくりしたのは「1回目はこれを取り上げます」と上・下に分けて朝刊に掲載されていたことです。つまり、このインタビュー記事はこれからも連載されていくということです。今回取り上げられていたのは「旧優生保護法」でした。

旧優生保護法(1948~96年)下で障害者らに対し強制的に行われた不妊手術を巡っては、6月2日現在で38人が提訴し、6月16日までに地裁・高裁で16件の判決が言い渡された。

国の法律として長い間、障害者に対して強制的に不妊手術を行っていた――。これはまさに人権の問題で、「子孫を残してはいけない」と国が決め、不妊手術をしてしまうという法律がありました。

信じられないようなことですが、その人たちに特に説明もしないケースもかなりあったとされています。この法律が廃止になったのは1996年、27年前のことです。

◆「憲政史上最悪の人権侵害」

被害者は少なくとも2万5,000人。国はこのうち約1万2,000人が生存していると推計しているそうです。徳田さんはこの問題に正面から取り組んできて、この連載で「憲政史上最悪の人権侵害」と話しています。

国は法律を廃止し、2019年に被害者に一時金320万円を支給する法律を成立させています。徳田さんは、この「法律自体には大きな意味があり、法成立に尽力した国会議員の皆さんの努力は評価されるべきであることはまず指摘しておきたい」とした上で「被害に比べ一時金の額は低すぎる」とも話しています。

裁判では札幌高裁で1,650万円、東京高裁では1,500万円の支払いを国に命じています。しかし、320万円という一時金とはかなりの開きがあります。