もともと食堂車を購入したのは、豊山さんの母・くにさんです。鉄道旅行が大好きで父と一緒に全国を飛び回りました。


※食堂車の所有者 豊山信子さん
「食堂車を払い下げていただけると話を聞いて、『赤いのと青いのがあるけど、どっちがいい?』と(母が)兄に聞いた。兄は『青いほうがいいんじゃない?』とさりげなく言ったら、食堂車がやってきました。青いのがきました


購入したのはサシ581形食堂車で、1990年に200万円で払い下げてもらいました。車両が所属していたのは国鉄青森運転所です。特急型寝台電車「583系」として青森と東京・上野を結んだ特急はつかりなどで活躍し1986年に引退しました。

車内にはオーブンやコンロが当時のまま残る…

※レポート 竹島紀博 記者
「厨房は現役当時そのままの形で残されています。オーブンやコンロ、こちらには冷蔵庫も残されています。狭い空間で効率よく作業できるように設計されていたことがわかります」


豊山さんの母は自分が経営していた福祉施設に食堂車を設置し、倉庫として使っていました。その管理を引き継いだ豊山さんがいま懸念しているのが、雨漏りなどで急速に進む老朽化です。

※食堂車の所有者 豊山信子さん
「時間ないです。本当に時間ないです。食堂車が壊れてしまう。屋根の雨漏りを見ても、急いで補修かけないといけないし、もう自分で維持する力がないので、なくなく解体しかないと親戚で話していました」

「583系食堂車保存会」が立ち上がる

この危機に立ち上がったのは、「583系食堂車保存会」です。車両を豊山さんから無償で譲渡してもらい千葉県いすみ市にある鉄道のテーマパーク「ポッポの丘」へ移設して保存することを目指していました。車両の搬出・輸送・設置には約1500万円がかかるため、いまはクラウドファンディングで支援を呼びかけています。


※583系食堂車保存会 梅原健一代表
「塗装の変更もない食堂車はこの八戸の車両1両のみだと思う。40代以下の人は食堂車の存在を知らない人が多いと思うので、貴重な電化製品・産業技術力を含めて、食堂車はこういうものだと伝えたい」


豊山さんにとっても思い出がつまった食堂車を解体するのは辛く、千葉県に送り出すことが最善の選択としています。

※食堂車の所有者 豊山信子さん
「全員で移送計画のために一生懸命突っ走っている。ここまで50年頑張ってきた食堂車ですから、これからも永久的に頑張って生き延びて欲しいです」

昭和の鉄道旅行に華を添えた国鉄食堂車を未来へ。豊山さんたちの計画は、大きな夢を乗せて走り始めようとしています。

※クラウドファンディングの目標額は1500万円で、14日現在は400万円台。8月21日までに達成しなければ成立せず食堂車は解体となるそうです。詳しく知りたい方は「583系食堂車保存会クラウドファンディング」で検索をしてみてください。
<追記>
食堂車のクラウドファンディングは、8月21日に目標を達成して終了しました。
目標金額1500万円に対して2082万3000円の支援が集まったということです。