去年4月、東京都世田谷区のマクドナルド経堂駅前店にダウン症の高校生、渡辺佑樹さんがアルバイトとして採用されました。今回はその現場を取材しました。
アルバイトのきっかけは職業体験時の約束
佑樹さんは現在19歳の高校3年生で、都立荻窪高校の定時制に通っています。アルバイトは週に2日ほど。授業前の午前9時から2時間程度働いています。佑樹さんは中学2年生の時に経堂駅前店で職場体験に参加し、当時の店長から「高校生になったら一緒に働こう」と誘われました。それが今の店長にも引き継がれていて、採用されたということです。
朝から多くのお客さんが訪れる経堂駅前店で、佑樹さんはトレイをせっせと磨きます。

マクドナルド経堂駅前店 渡辺佑樹さん
「トレイを拭いたりしています。台ふきんで拭いたり、楽しいです。1,2,3,4,5,6,8,9,10。う~んOK!」
数字を数えているのはトレイの枚数ではなく、トレイを拭くときのもの。10を数えるまでに隅から隅までキレイに拭き上げていました。ほかにも、ハッピーセットに使うおもちゃの準備、厨房のゴミ箱を磨くといった仕事を任されているそうです。
「1人のクルー」として「しっかりやってもらう」
経堂駅前店の店長、白鳥隆之介さんに、仕事を任せる上で大切にしていること、今後どんな仕事を任せたいか伺いました。

マクドナルド経堂駅前店店長 白鳥隆之介さん
「今もフォローはしますが、佑樹くんがいることで他の人が1人取られるのであれば意味がないと思っています。そのため、1人のクルーとして、しっかりやってもらうことが大事だと従業員に伝えています。いずれは、お客様が食べるサラダを作る仕事をさせていきたいとは思います。ただ、ダウン症の人の中でレベルの差があると思っていますので、現段階ですぐにサラダを作らせるのは、まだ早いかなと思っています。少しずつ着実に、1個ずつ仕事を覚えて欲しいと思っています」
佑樹さんの仕事ぶりを見せてもらうと、「今、佑樹さんにして欲しい仕事」をトレーナーの店員が指示するのみで、あとは1人で作業をしっかりとこなしていました。他の店員はバーガーを作ったり、接客で忙しいので、佑樹さんに付きっきりの人は誰もいません。
また、元気な挨拶も佑樹さんの特徴で、白鳥店長は「いつも元気にやってくれているところが非常にいいと思う」と評価しています。
佑樹さんと働くことでまわりも変わった!
佑樹さんが経堂駅前店で働くことによって、従業員の意識の変化やお客さんからも反響があると白鳥店長は教えてくれました。

マクドナルド経堂駅前店店長 白鳥隆之介さん
「本人は一生懸命、仕事をしてくれているので、それを見て、周りの人や、お客様がすごく刺激を受けてると感じています。今までは店員同士も声をかけたりとか、挨拶をしたりということが少なかったお店だったんですけど、佑樹くんがいることで、声を掛け合うようになったりとか、挨拶をしっかりとするようになったりっていうところが見えるようになりました。お客様からは、彼が働いてる姿を見て『自分も頑張らなきゃ』という声をいただきました。それを聞いて、彼が働いてることにすごく意味があるなと感じています」
佑樹さんもマクドナルドでのアルバイトが大好きで、毎回母親に「きょうも楽しかった」と伝えているそうです。
マクドナルドでは、障害者のみならず国籍や年齢問わず採用をしていて、多様性を尊重している会社です。多様な方が働く職場は、従業員の心を育むことにもつながると私は考えます。このような取り組みが様々な企業に広がることを願います。
(TBSラジオ「人権TODAY」担当:宮内悠也)