ロシア国内で語られる“ポスト・プーチン”のシナリオ

反乱を起こした、ワグネルの創設者プリゴジン氏。
かねてから、ロシア軍のトップ=ショイグ国防相とゲラシモフ参謀総長を強く批判してきた。

プリゴジン氏
「ショイグ(国防相)!ゲラシモフ(参謀総長)! 弾薬はどこにある!」

元読売新聞モスクワ支局長の古本朗氏。
旧ソ連時代から、ロシアを取材し続けてきた。

古本氏は今回の反乱で、プーチン体制の亀裂を感じさせる象徴的なシーンがあったと指摘する。プリゴジン氏が、ショイグ氏とゲラシモフ氏に会わせるよう詰め寄った場面だ。

プリゴジン氏
「(ゲラシモフ)参謀総長とショイグ(国防相)を出してもらいたい」

ロシア軍の幹部
「どうぞ、連れて行って」

対応したロシア軍の幹部は、反乱軍のトップ、プリゴジン氏の言葉に笑みを浮かべている。

元読売新聞モスクワ支局長 古本朗 氏
「(軍幹部が)どこでも連れて行ってくださいと、冗談まじりで笑って答えるわけです。反乱軍と対峙しようという意思は全く感じられなかったと言っていいですね」

金平茂紀キャスター
「軍の中にも、今回の“プリゴジンの乱”という反逆行為に対してある種のシンパシーというか感じている動きはあった?」

元読売新聞モスクワ支局長 古本朗 氏
「軍や秘密警察FSBの中にプリゴジン・シンパがいるという指摘は前から専門家の間ではあった。それが本当だったという事が徐々に示されてきていると言っていい」

反乱後、プリゴジン氏は隣国ベラルーシに逃れ、その動向が注目されている。

そんな中、「事前に反乱を知っていた」と報じられていたウクライナ侵攻の副司令官スロビキン氏が「逮捕された」と、複数のロシアメディアが伝えた。

元読売新聞モスクワ支局長 古本朗 氏
「プーチン政権として非常に難しい問題があるのは、反乱を起こしたプリゴジン氏に対しては事実上、無罪放免にしているわけです。それで、それに“協力した”スロビキン氏を厳罰に処すとなれば、軍の世論、社会の受け止めを考えても難しい面が出てきますよね」

実は今、ロシア国内で、“ポスト・プーチン”のシナリオが語られ始めていると、古本氏は言う。そのモデルになると囁かれるのが、かつて旧ソ連で起きたクーデター未遂だ。

1991年、当時の副大統領ら保守派のグループがゴルバチョフ大統領を軟禁し、退陣を迫った事件。クーデターは未遂に終わったが政権は求心力を失い、のちにソ連崩壊へとつながっていった。

元読売新聞モスクワ支局長 古本朗 氏
「この事件では、ゴルバチョフ氏が退陣を拒否したために未遂に終わりましたが、今回はプーチン氏の同意の上で、集団指導体制への権力移譲を成就させようと、国家の権力の中枢、あるいは周辺にいるエリートたちの中でそういう構想があるのではないかとの見方が強まっています」

今回の反乱でプーチン政権にほころびは出るのか。この秋には「地方選挙」が行われる。