「結婚しない方がよかったのかな」、次世代も苦しめるカネミ油症
高知市に住む中内孝一さん(52)も、認定を求め続けている二世の一人だ。
母親が汚染油を食べた3年後、あごと唇がのどまで裂けた重度の口唇口蓋裂で生まれた。耳の中に腫瘍が何度もでき、手術の度に生死の境をさまよい、高額な医療費は一家を困窮させた。
いじめを受け、心も病んだ。常に倦怠感があり、今はビル管理のアルバイトをして両親と暮らす。血中ダイオキシン類濃度は、一般と変わらないとされる『30未満』だ。

油症二世 中内孝一さん
「だいたい毎年、診断が血液のダイオキシン類濃度でなるんですけど、今更ね、50年以上も過ぎて。やるんだったら(生まれた)当時にやって欲しかった。ずっと苦しめられてきたので。このカネミ油症は“病気のデパート”(といわれる)。片っ端から(症状が)あるもんだから、(調子が悪いときは)全部の病院の科を回らなければならない、そういう状態です」
数値によって、同じ親から生まれた兄弟でも認定が分かれる。福岡県大牟田市に住む認定患者、森田安子さん(69)は、3回の流産の末、3人の子供を授かった。長女だけが、血中ダイオキシン類濃度が油症患者の基準である『50』を超え、認定された。

長女(1979年生まれ)
「これ『乾癬(かんせん)』なんです。広範囲で腰に出てる」
カネミ油症認定患者 森田安子さん
「こんな、なるの。息子は全身」
全身に広がるやけどの様な症状。長男は、さらに広範囲に広がっているという。しかし、血中ダイオキシン類濃度の数値は低く、認定されていない。
長男(1981年生まれ)
「子どもが生まれる予定なんですけど、そこは心配ですね。自分のことより。そっちに影響がなければいいな、とは思いますけどね」

森田安子さん
「なんでこんなね、子供にまで辛い思いさせてね、って思う。『自分の責任じゃない』ってみんな言うけど、結婚しない方がよかったのかなって思います。私は何で顔を出して、色んな活動をするかって、それ位しか償いできない。子どもに対して、治療させてあげたいし、認めてもらいたい。この子たちが本当に被害者ですよって。私達一世代がいなくなってなかったことにされる、社会も忘れてしまって、社会的にもこの問題が葬り去られるのが一番心配」
患者に認定されれば、『医療費』と『年間24万円の補償』が国とカネミ倉庫から受けられる。現在の認定患者数は約1500人。
カネミ倉庫は、これ以上患者が増えたら「今の補償を継続できない」と訴えている。