広島は認められ、長崎は認められない"大きな矛盾"を抱えた被爆者認定の『新基準』が先月から運用を開始しました。
”被爆体験者”と呼ばれる長崎の被害者の救済を目指し、様々な場で、懸命な模索が続いています。

※被爆体験者…国が定める被爆地域外で原爆にあった人たち。被爆未指定地域として、原則、被爆者と認定されず、被爆者健康手帳は交付されていない。

■ 分断したり、差別がないのが民主主義

10メートル…歩くのがやっとの身体です。
最初の提訴から14年がたった被爆体験者訴訟。500人を超えていた原告は、最高裁での敗訴後、44人になりました。


原告団長の岩永千代子さん、86才。体調不良で引きこもっている原告達に毎日の様に電話をかけ、近況を伝え、励まし続けています。

第2次 全国被爆体験者協議会 原告団長 岩永千代子さん「もうねギリギリ。みんな抗がん剤飲んだりとか。許されないですよ。国民を分断したり、差別がないのが民主主義。民主国家じゃない、それだったら」


先月、広島では「黒い雨」の被害者に対し、新たな認定基準に基づく被爆者健康手帳の交付が始まりました。


長崎は新基準の対象外。同じ法律のもとで行われてきた被爆者行政が「政治判断」によって分断された状態となっています。


衆院 厚生労働委員会(5/18)立憲民主党 山田 勝彦 議員:
「広島も長崎も同じです。長崎の被爆者だけを救済しない国は『平等権』に反するのではないでしょうか?お答えください」

今月18日の衆議院・厚生労働委員会です。


後藤 茂之 厚労大臣:
「広島も長崎も原爆のために大変な被災を被った…被害を被ったという事だけで共通して取り扱うということでは"なく"、そうした"事実認定の差"もきちんと整理した上で、訴訟外での早期の原爆手帳の交付という議論を取り組んでいかなければいけないと思っているわけです」

■ ”平等な取り扱い”にならない2つの理由

国が長崎を外した『理屈』はこの2つ──
・黒い雨が降った客観的な証拠がない
・最高裁で敗訴した

1999年、長崎県と長崎市が被爆体験者7千人余りを対象に実施した『証言調査』があります。

今回改めて精査したところ129人が黒い雨または雨にあったと証言していました。
しかし国は、この調査も『客観性がない』と切り捨てています。

長崎市 田上 富久市長「市としても、様々な資料を見つけながら、それを絞り込んでいる状況ということになります。そういう証拠・状況を揃えて理詰めでやっていく分と、もう一つはやはり広島と長崎のバランスが取れないことは絶対にできないという全体的な観点からの政府等への働きかけ、これもすごく大事な意味があると思いますし」


長崎県は今年2月、気象や放射線、法律の専門家4人による”専門家会議”を設置しました。
県・市が行った『証言調査』が、"国が求める客観的資料"であることを、独自の検証で証明しようとしています。


県原爆被爆者援護課 犬塚 尚志 課長「県独自で、専門家の方々と『どうすれば長崎が認められるか?』を踏まえて検討を始めている所でございまして。広島が認められるのであればぜひ長崎も認めて頂きたい。そこは県職員としても耐え難いので」