ダム被害の現場 ウクライナ南部ヘルソンから報告

増尾聡記者:
ウクライナ南部のヘルソン市内です。ドニプロ川の川岸から7キロほど行ったところが、ロシア軍との前線になりまして、ドニプロ川を挟んで、ウクライナ軍とロシア軍が睨み合っている場所でもあります。
ウクライナ軍は6月上旬から領土を奪い返そうと本格的な反転攻勢に出ていますが、ヘルソン市内も、ウクライナ側による犯行の可能性が指摘される場所で、今も数分に一度、大きな砲撃音が鳴り響くなど、かなり緊迫した状況が続いています。
重要な局面の最中に起きたロシアでの反乱ということもあり、ウクライナの関心は非常に高いです。地元メディアも連日、最新情報を伝え続けていて、市民の間でも今回の反乱に乗じたウクライナ側の攻勢が強まるのではないかという期待の声も聞かれています。

ヘルソン市民
「彼らの間で内戦になってほしかった。(反乱と反転攻勢は)つながりがある。日を追うごとに反転攻勢は、ますます大きくなっていくだろう」
ホラン千秋キャスター:
ロシアでの反乱で、ウクライナへの影響は何か考えられるんでしょうか?
増尾記者:
ウクライナの政権幹部側は、まだ善戦の影響について目立ったコメントはしていません。一方で地元当局は「ヘルソンでは、24日そして25日と、ロシア側からの砲撃の数がぐっと減った」という話をしていまして、前線では大規模ではないにしろ、ロシア軍の前線の指揮系統に何らかの影響を与えた可能性は考えられます。
「取り戻す」ウ軍の“反転攻勢”兵士や住民の気持ち
さらにロシアが占領する向こう岸に、ウクライナ軍の一部が渡ったのではないかという情報が出始めているなど、規模としては大きいものではなかったとしても、多少なりともウクライナ側に有利に働いていると考えることもできるかと思います。
まだロシア国内での混乱は決して収まったとはいえませんので、混乱の深さ、そして長さに応じてウクライナの戦況への影響も変わってくると思います。
慶応大学特任准教授 若新雄純さん:
今回の戦いは、ウクライナの人たちが自分たちの土地を守りたいと思って戦ってるわけです。今回のダムが破壊され、地雷があちこちに流されたと聞いてますが、仮に今後、ウクライナ人たちが自分たちの土地を取り戻すことができたとしても、ボロボロになってしまっていて、すぐに住めない状況になるかもしれない。取り戻しながら、一方で自分たちの土地を破壊していかなければ、戦いを乗り越えられないという状況について、ウクライナの人たちや兵士の方は、どんな気持ちなのかなと、取材で感じることありますか。

増尾記者:
上流にあるダムが決壊して、壊滅的な被害をもたらしました。地雷が流れ着いたという話もありましたが、ここから1ブロックほどの、すぐ近くの場所にも、流れ着いた地雷が埋まっている可能性があるとして、規制線を張って当局が対応しています。
市内を取材しましたが、住宅街にも非常に大きな被害がもたらされていて、20日経った今でも自宅が浸水して住民の方々が片付け作業に追われ続けているのです。
そうした中でも、ウクライナ側が反転攻勢をしています。まずはこの土地を奪い返すんだという意識を高く持って反転攻勢に臨んでいます。住人は「私達は取り戻さなくちゃいけないんだ」と口にしていますので、多少の生活の面での犠牲は致し方ないと捉えていると考えられます。

若新雄純さん:
戦争で一番恐ろしいのは「統率が取れていないロシアのクレイジーさ」だと思います。まだ真っ当な考えとか、冷静な考えで、やってるんだったら話し合う余地もあるかなと感じますけど、話が通じないというか、そもそも混沌とした中で、無茶苦茶な考え方で侵略を進めているんじゃないかと思います。
統率取れてないからチャンスではなくて、統率が取れない、もう誰にも止められない暴走したロシアを僕らが遠くから見てるしかない現状が怖くて、このクレイジーさと国際社会が、どう向き合っていけばいいのか不安です。