再発見は「異常気象の警鐘」かもしれない
これは私の考えではあるが、再発見の二つ目の要因を裏返せば、『異常気象』がこれまでの治水の考え方で追いつかないくらいの速度で進んでいて、このままでは、一定期間安定していた淀川で、将来また河川氾濫が起こりうる可能性を示唆しているのではないだろうか。人の住みやすさが進めば、野生生物には住みにくくなる。逆に野生生物が住みやすくなるということは、これは、自然から人類への警鐘ととらえられまいか。
小さな淡水魚「ツチフキ」は、去年、道頓堀川でニホンウナギを捕獲したMBSの番組『関西ジャニ博』のチームも、鴨川と、琵琶湖の和爾川の生態調査で1尾ずつ捕獲していた。参加していた研究者が少々ざわついていたことを、現場に立ち会っていた私もよく覚えている。それくらい、ツチフキが増えてきているということなのかもしれない。今後、このツチフキがどこに由来するのかは、遺伝子解析をして詳細な分析を待たねばならないが、少なくともこの「発見」は、一つの人類の向かう方向を示しているように思える。

治水の考え方も最近は、気候変動をふまえて、河川だけでなく流域全体で協働する「流域治水」という考え方に向かっている。そうした考え方こそが、生物多様性の保全につながってくる。「流域」のみならず、野生生物のことも考慮した、大きな「治水」の考え方が今後は必要なのではないだろうか。
発見に関わった生物多様性センターの山本義彦さんは語る。
「ツチフキはでてきましたが、見つかっただけで、まだ楽観視していません。ゼロにならずに30年間細々と生きていたんだとしたらすごいことですが、在来かどうかまだまだ分析が必要です。それに生息環境の整備や新たな侵略的外来生物への対応など課題は山積みです。」
〇尾㟢豪 MBSプロデューサー、元報道局解説委員。京都大学農学部水産学科卒。情報番組を中心に『お魚博士』として、テレビ・ラジオで20年に渡り生き物に関するニュースを解説。2010年には、絶滅種クニマスの発見に関わり、一部始終に密着したドキュメンタリー番組『クニマスは生きていた!〜“奇跡の魚”は、いかにして「発見」されたのか?〜』で、放送文化基金本賞、科学技術映像祭内閣総理大臣賞、など五つの賞を受賞。道頓堀川でニホンウナギを捕獲したバラエティー番組『関西ジャニ博』に、監修として関わる。