今年も一年の半分が過ぎ、6月21日には夏至を迎えました。夏至は皆さんご存知の通り、昼間が1番長い日。そして太陽高度が1番高くなる日でもあります。この時期は晴れると太陽の力強さを目で、肌で感じますよね。この太陽が”いなくなる”ことを皆さんは考えたことがありますか?

訪れる不安と期待…太陽を“失った”経験とは?

実は私は太陽を失った経験があるんです。2017年の夏、アメリカ大陸を横断する皆既日食があったことを皆さんはご存じでしょうか。西はオレゴン州から東はサウスカロライナ州まで、14の州を横断する壮大な天体ショーは「グレート・アメリカン・エクリプス」と呼ばれ、アメリカ全土が沸きました。皆既日食とは、月が太陽の全てを覆い隠す現象のことです。そう、これが私の太陽を”失った”経験です。ちょっと言い過ぎましたね(笑)。

ですが、この皆既日食というのは、ものすごいんです。何せ昼間に辺りが急に真っ暗になるのですから。その瞬間を迎えるまでの数分間は異様な静けさとひやっとした空気、鳥たちのざわめきに包まれ、大勢の人たちと一緒に同じ空を見上げながら不安と期待にさらされることになります。そして真っ暗になる直前には太陽が最後の力を振り絞って、”炎の輪””ダイヤモンドリング”という荘厳な姿を見せてくれます。そして訪れる暗闇…これを聞くとどうでしょう?たった2分程度の時間ですが、太陽を失った経験、というのはあながち間違っているとは言えないと思えませんか?

皆既日食は、地理や気象の問題もあり中々見られるものではありません。しかしアメリカ横断となれば、行きやすいし見られる確率がかなり高くなる、ということで、あの夏私は仲間と一緒にはるばるアメリカのオレゴン州、マドラスという場所へ丸2日ほどかけて行くことにしました。

シアトルへ飛行機で飛び、電車でポートランドまで行き一泊。翌日キャンピングカーで観測地であるマドラスまで向かう旅です。なぜこのマドラスを目的地にしたかというと、日食が見られる軌道上であったことはもとより、内陸の乾燥地帯で年間快晴日数が300日という、驚異的に晴れの日が多い場所だったためです。のどかな田舎町であるマドラスにはキャンピングカーが停められる日食フェスのような場所が用意されており、世界中から人が押し寄せていました。