前年比7.2倍の“ふるさと納税”…返礼品を送る干物店では…

蛸島漁港から歩いて3分ほどの住宅地でみられるのは、玄関先に貼られた赤い紙や黄色い紙です。建物の危険度を判定した貼り紙で、被害が大きかったことを物語っています。

市内の建物には張り紙が

歩いていると、子どもたちのにぎやかな声と共に干物が焼けるいい匂いが漂ってきました。蛸島漁港からすぐ近くの干物店「さかなや甚五朗」の店長、番匠利一さんです。今回、特別にバーベキューコーナーを設けてもらいました。この七輪も地元、珠洲市で作られたものなんですけども、網の上には、サザエだったり甘エビだったり、ハタハタ、メギス、サヨリもありますね。番匠さん美味しさの秘密を教えてください。

店長の番匠利一さん

番匠さん
「珠洲は水揚げされる魚の種類が豊富で、すぐそこの市場から買い付けます。干物にするために買ってきます。また塩田村の天然塩を使うなどして、大変おいしく仕上がっていると思います」

これらの干物は冷風乾燥で水分を飛ばし、うまみを凝縮させるているんです。干物には保存食のイメージがありますが、さかなや甚五朗で作る干物は、蛸島漁港をはじめ能登各地で水揚げされた魚を使って加工しています。魚をさばいて、内臓などを丁寧に取り除いた後にそのまま塩をまぶすかと思いきや、冷水で一旦〆るのがポイント。こうすることで、魚の臭みが抜けるんだそうです。

加工場には新鮮な魚が並ぶ

この丁寧な仕事が全国に多くのファンを持つ理由ですが、先月の地震後には常連客だけでなく、ふるさと納税の返礼品としての注文も増えたということです。加工場の人は「キレイに仕上がるように考えるだけ。美味しく食べていただけたらいいなと」と話していました。また、番匠さんの奥様は「FAXで頑張ってくださいと添えてまとめて注文が来たりとか。考える暇がないというか、「お客さんに送らないといけない」となると震災のことを考えることがない分、ちょっと気持ち的にはいいのかな。もう感謝しかないです」と話していました。