国内初の大規模商業運転。工事は日本と欧州の混成チーム
政府が再生可能エネルギー拡大の切り札と位置付ける洋上風力発電。国内初となる大規模な洋上風力発電所が2022年12月、秋田沖で商業運転を始めた。総合商社丸紅の出身で秋田洋上風力発電社長の岡垣啓司氏に話を聞いた。

丸紅など13社が出資する秋田洋上風力発電は現在、秋田港、能代港で合わせて33基運転している。発電能力は約14万キロワットで、一般家庭13万世帯の消費電力に相当する。風車は海底深くに打ち込んだ基礎に据え付けた着床式と呼ばれるタイプで、ブレードの直径は117メートル、海面からの高さは150メートルあり、40階建てのビルに相当する。陸揚げされた電気は変電所を経て、東北電力の電力網に接続され、東北地方に供給されている。
――2022年12月に商業運転を開始した。今のところ稼働の状況はどうか。

秋田洋上風力発電 岡垣啓司氏:
これまで順調に稼働しており、幸い風も計画通り吹いていて発電量もほぼ計画通りとなっています。
――設置工事は大変だったのでは。
秋田洋上風力発電 岡垣啓司氏:
日本では前例がなかったので、工事はで実績のある欧州の人員を現場に導入して日本人と欧州人との混成チームでやり切りました。
――日本で初めて商業運転をしている大型の洋上風力ということで、ビジネスに乗せることが一番大きな目的だ。
秋田洋上風力発電 岡垣啓司氏:
この事業は開発の初期から全て民間の資金で開発して建設して、商業運転開始を達成したという意味で非常に画期的な大型の洋上風力発電所ということで、今後のモデルとなる事業となっています。
――この事業がビジネスとして成立しなければ、後から続いてくる事業者たちも及び腰になってしまう。
秋田洋上風力発電 岡垣啓司氏:
日本で洋上風力発電事業が実際に実現できるということをこのような形で示す。洋上風力発電産業というのは巨大な産業ですので、巨額の資金を必要とします。資金調達といった面でも大きく貢献できると考えています。
――総事業費1000億円も返していくということか。
秋田洋上風力発電 岡垣啓司氏:
FIT(再生可能エネルギーの固定価格買取制度)の認定案件ということで20年間、商業運転します。その20年間で総事業費、今後の維持管理費用を回収していくという事業です。
――FIT事業なので1キロワット時36円で東北電力が買うことも決まっている。儲けを出していくためには、稼働率をいかに上げて維持メンテナンスコストをいかに下げていくかがカギになる。
秋田洋上風力発電 岡垣啓司氏:
洋上なので現場に行くには船舶を使わないといけない。実際に風車発電可能な状態を高く維持することが肝となっていて、常に気象条件を見ながら安全にやっていくということを今毎日現場で実践しているところです。

現在運転している秋田洋上風力発電の他に、三菱商事が中心となって行う計画の能代市などの沖合と由利本荘市の沖合での洋上風力発電が合わせて103基、総発電量が135万キロワットとなっている。さらに他にも2か所で合わせて70万キロワット相当の洋上風力発電が計画されている。
――秋田あるいは青森、北海道の日本海側が洋上風力に適しているということか。
秋田洋上風力発電 岡垣啓司氏:
強い風が安定的に吹く。これは洋上風力の適地の条件になるので、そういう意味で適地が多いということになります。
――秋田洋上風力発電あるいは出資元の丸紅には新しいところにも進出したいという希望があるのか。
秋田洋上風力発電 岡垣啓司氏:
今後数十年間にわたって洋上風力発電の導入、これは着実にやっていかないと2050年カーボンニュートラルの実現は達成できないと考えていますので、これを第一歩として今後多くの事業者がこういった案件の形成に携わって導入を拡大していくことが重要だと考えています。