「49か国に対し、初めての全面取材禁止」

5月25日にモスクワで旧ソ連構成国が集まって開かれた「ユーラシア経済同盟首脳会議」。そこでプーチン氏の言葉を遮り、アルメニアとアゼルバイジャンが領土を巡り罵り合った。かつてロシアでは考えれられない光景だった。プーチン氏の威光の揺らぎはこれだけではない。アルメニアの首相は6月2日にチェコのテレビ局のインタビューに「ウクライナとの戦争において我々はロシアの同盟国ではない」と明言するほどだ。さらにプーチン氏を尻目に、アルメニアとアゼルバイジャンの中を取り持つ役目として西側が動き、ゼレンスキー大統領はアゼルバイジャンの大統領と首脳会談を行う…。このところプーチン氏の株が下がってきているように見えるのだ。

ロシアの弱体化…さらに最近こんなことも…。
毎年年1回開かれる『サンクトペテルブルク国際経済フォーラム』。これは1997年から開催され、ロシア版ダボス会議ともいうべきもので、ロシアの友好国や経済的結びつきが強い国が参加してきた。2018年には当時の安倍総理も参加している。そしてウクライナ侵攻後も取材は自由だった。去年は西側メディアもいる前で「西側の制裁は失敗だ」とプーチン氏は胸を張った。ところが、今年は非友好国のメディアに取材許可は出さないとした。対ロ制裁を科している欧米、日本など49か国に対し、初めての全面取材禁止だ。

朝日新聞 駒木明義 論説委員
「これ非常にバタバタなんです。私も取材記者登録したんですが、1回は許可が出たんです。で、わずか1日後に”やっぱり駄目です”って。最初私個人が出入り禁止なんだと思ったんですけど、すぐ報道が出て、ペスコフ大統領報道官が、今回はそういう決定をしたと…。経緯から見ても非常に切羽詰まって対応した。反転攻勢は切迫する中、会期と重なってしまう。そんな時に欧米の記者を入れるのはまずいと…」

アレストビッチ氏が言うように来年2月に戦争の行方がウクライナに傾いていたとすればプーチン氏の大統領再選はかなり厳しくなる。今回の措置は、兵器や食料の足りなさだけでなくプーチン氏の精神にも余裕がなくなっていることの証左なのかもしれない。

(BS-TBS 『報道1930』 6月5日放送より)