芥川賞を受賞したデビュー作「おらおらでひとりいぐも」から6年。岩手県遠野市出身の作家、若竹千佐子さんが新作「かっかどるどるどぅ」について語りました。
若竹さんは1日午前、ラジオ出演のためIBCを訪れました。

若竹さんは2018年1月、デビュー作「おらおらでひとりいぐも」が第158回芥川賞に選ばれました。当時63歳。史上2番目の高齢での受賞でした。
69歳となった若竹さん、5月25日に6年ぶりとなる新作「かっかどるどるどぅ」を発表しました。

(若竹千佐子さん)
「(新作が出るまでの6年間は若竹さんにとって作家としてどんな期間だったのですか?)本当に夢心地だったんですがそれから1、2年してだんだん焦ってきましてね。皆さんに今度は何書くのとか。それが嬉しいのと同時にねじっとしてられない気になって、自分を奮い立たせるのに時間がかかったような」
「かっかどるどるどぅ」。目を引くタイトルには若竹さんの子どもの頃の記憶が関わっていました。
(若竹千佐子さん)
「ひょっこりひょうたん島のドン・ガバチョという、私の年代の人だったら覚えていると思うんだけど、ドン・ガバチョが『ドイツではニワトリはカッカドルドルドゥと鳴くのであります』みたいなセリフがあって。今度の小説のタイトルどうしようといった時にこの言葉がなんかパッと浮かんだんですよ」
「かっかどるどるどぅ」の主人公は5人。
・女優の道を捨てきれず老境のつましい生活を送る悦子。
・義父母の介護に人生をささげた芳江。
・大学院を卒業しながら非正規の職を転々とする理恵。
・生きることに不器用で自死を考える保。
・古いアパートの一室を開放し手料理をふるまう吉野。
生きづらさを感じている登場人物の背景に横たわる非正規雇用の増加や多重介護といった社会課題。そうした状態を放ってはおけないと訴えます。
(若竹千佐子さん)
「自分はみじめだとか情けないとかってね、自分を責めないで。あんたのせいじゃないよということ。だから声を出して言わねばダメだあよって。それは制度が悪いんですもん。おかしいと思ったら言わねばダメだあよ。みんなもほっとかないで助けてあげようよと。そういう世の中にしたいですよね」
インタビュー中にも時折お国言葉が飛び出す若竹さん。作品でも心情を吐露する場面で方言が効果的に使われています。
(若竹千佐子さん)
私の本音が出る言葉ですよ。こうやって標準語でしゃべっているとちょっといい振りこいた私ですよ。特に遠野に帰ってきた時なんか黙っていてもわーって出ます。父とか母の思い出もひっくるめてこの言葉が私この言葉で育ってきたんだみたいな」

コロナ禍を経て、孤立しがちな私たち一人ひとりに「みんな」で支え合って生きることの尊さや幸せを温かくも力強い文体で語りかけます。
(若竹千佐子さん)
「お待たせしました。やっとできあがりました。是非お暇な折には手に取って読んでいただければ幸せです」
若竹千佐子さんの新作、「かっかどるどるどぅ」は河出書房新社から出版されています。