春から夏にかけて旬を迎える海の幸、ハマグリ。しかし、ハマグリの一大産地・三重県桑名市をはじめとする県内の多くの海岸では、悪質なハマグリの密漁が行われている実態があります。2023年のゴールデンウィーク、三重県内の海岸の至る場所で、ハマグリの密漁をする大勢の人の姿が。悪質なハマグリ密漁の現場を取材しました。
「採貝禁止エリア」注意書きのすぐそばに、熊手を持った人だかりが…

観光客で賑わう三重県明和町のキャンプ場。海岸では、目玉の「潮干狩り」を楽しめるよう、一部のエリアを開放しています。しかし、それ以外の場所ではアサリやハマグリの採貝は禁止されており、周辺には「採貝禁止」と、大量の注意書きがあります。
しかし、潮が引き干潟が姿を現すタイミングで海岸を訪れてみると、熊手を持った数人の男女の姿が。男性の傍らには、カゴいっぱいのハマグリが置かれています。

(男性)
「大きいのは選り分けてフライパンで焼いてさ。小さいのは袋に入れてさ、何軒かに配るんやわ。近所に配ると喜ばれるもんでさ」
ここは禁止エリアではないかと尋ねるも、男性はこの場所はいいはずだと主張。しかし、近くに設置されている看板を確認すると、男性がハマグリを採っていた場所は確かに禁止エリアです。三重県漁連にも話を聞きました。

(三重県漁連・下村友輝さん)
「(約1キロ離れた)橋までダメです。ここは(稚貝の)放流もしているところなので」
知らずに密漁してしまっている人もいますが、中にはこんな人たちも。

(男性)
「売る分ではなく、自己消費ぐらいならいいんじゃないかと思う」
(Q.内心は「まずいかも」と思いながらやっている?)
「まあ…ありますね。皆さん、そうじゃないですか」
この日、ハマグリの入ったバケツを手に去っていったこの男性は、なんと翌日も現れました。図を見せて、改めて禁止エリアだということを伝えると…。

(男性)
「漁師さんがここで採るわけでもないのに。採らないんですよね。私たちが被害を与えているわけではないのかな」
コロナ禍で密漁が激増!漁師たちにとっては死活問題

こうした密漁は、この数年で劇的に増えています。
(伊勢湾漁協の漁師)
「特にコロナ禍になってから極端に増えましたね。遊びに行くところもなくて、こういう場所で、レジャー気分で」

貝漁師歴30年の田中治さん。30年ほど前までは、1日4~5万円の収入があったといいますが、今では1日5000円程まで減少したそう。密漁は漁師にとって死活問題です。

今、水質の変化などで、三重県のハマグリの漁獲量は激減しています。資源を守るために漁を終えた田中さんが取り出したのは、大きな網目の金具。
(貝漁師・田中治さん)
「寸目(約3センチ)で止まるハマグリと、下に漏れるハマグリを選別して、下に漏れる小さなハマグリは放流」

資源保護のため、3センチ以下の成長しきっていないハマグリは、その場で海に放流しています。田中さんは、せっかく小さなハマグリを放流しても密漁者が根こそぎ採るため、資源が枯渇してしまうと話します。